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減らぬ飲酒運転…4割にアルコール依存症疑い 立ち直りへ支援急務  八街事故3年㊤

産経ニュース / 2024年6月27日 20時0分

千葉県八街市で起きた飲酒運転のトラックによる児童5人死傷事故から28日で丸3年を迎える。飲酒運転を許さない社会の風潮は強まるが、酒を飲んだままハンドルを握るドライバーは後を絶たない。検挙されたドライバーの中には、アルコール依存症の疑いがあると指摘されたケースも少なくないようだ。飲酒運転の根絶には、依存症から抜け出すための支援が欠かせない。

完全治癒できない

「酒を飲みすぎて家に帰れず、人の車も蹴飛ばして、もめた。職場や家族に迷惑をかけ続けた。そんな自分を変えたい」

今月13日、千葉市花見川区の幕張公民館で行われた「県断酒連合会」の例会。アルコール依存症の患者が自身の酒にまつわる失敗談を赤裸々に打ち明けた。

同会には酒を断ち切りたいと願う約190人が所属する。自らの経験を包み隠さず話し、その場に患者を支える家族も参加することで、断酒する仲間という意識が芽生える。

「依存症から立ち直るのにはまず仲間が必要だ。孤独にさせない。患者さんには新しい人生を生き、誇りを取り戻してもらいたい」

同会の塩川裕昭理事長は断酒活動の意義をこう語る。かつて、自身も大学時代から酒におぼれ、依存症と診断を受けた。飲酒運転の過ちを犯したこともあったという。その後、同会に参加することで酒を断ち切った。

「アルコール依存症は完全治癒ができない病気だ。飲酒運転による悲惨な事故につながることも多い。事故を起こそうとは思ってはいなくても、身体にずっと酒が残っている状況だ」(塩川理事長)

まず「減酒」挑戦も

県警によると、昨年1年間に県内で飲酒運転で人にけがをさせた事故は116件もあった。このうち6件で犠牲者が出た。

塩川理事長は「飲酒運転で検挙された人の約4割には依存症の疑いがあるとされる。断酒会なり、依存から抜け出すため、専門の治療機関とつながりやすい仕組みを作ることで事故を減らしたい」と語る。

断酒するのはハードルが高いと感じる場合には、まずは「減酒」が飲酒運転を減らすのに効果的だと指摘する専門家もいる。

筑波大付属病院(茨城県つくば市)の診療科「アルコール低減外来」で診察する総合診療医の吉本尚准教授だ。科学的知見を踏まえ、「断酒は無理でも、減酒ならばやってみようという人は結構いる。酔う時間が減れば、それだけ飲酒運転事故の減少にもつながる」と語る。

医療受診の義務化を

飲酒運転はあまりに危険だ。福岡県では平成18年、飲酒運転の車に追突された多目的レジャー車(RV)が海に転落し、乗っていた幼いきょうだい3人が亡くなった。

これを受け、同県は平成24年に全国初の罰則付きの撲滅条例を制定した。26年には、飲酒運転で検挙されたドライバーに専門の医療機関でのアルコール依存症の受診を義務付けた。

こうした対策で、一定の効果も出てきている。同県の飲酒運転事故は平成24年の185件から昨年は87件と、着実に減っている。

本県は受診の義務化には至らず、依存症専門の医療機関も福岡の20カ所に対し、わずか4カ所にとどまる。隣の茨城県では依存症の専門医ではなくても、必要に応じ対応できる30カ所超の医療機関が公表されている。

筑波大の吉本准教授は「医療機関での受診を義務付ける条例を導入し、県内どこにいても迅速に依存症に関し相談できる体制を整備するのも飲酒運転を減らすためには有効だ」と提案する。

八街市の児童5人死傷事故

令和3年6月28日、八街市の市道で下校中だった市立朝陽小の児童の列に大型トラックが突っ込み、3年生と2年生の男児が死亡し、3人が大けがをした。飲酒運転だった男の60代運転手が自動車運転処罰法違反の危険運転致死傷罪に問われ、懲役14年の千葉地裁判決が確定した。政府は全国の小学校通学路を緊急点検し、判明した危険な通学路約7万カ所のうち、5年12月までに約9割で安全対策を終えた。

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