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老いる私とたたかっているから気を抜けない 1人暮らしでも寂しくはない  家族がいてもいなくても 久田恵(818)

産経ニュース / 2024年11月26日 9時10分

イラスト・ヨツモトユキ

先日、たまたま知り合った人に「1人で暮らしている」と言ったら「まあ、お寂しいでしょうねえ…」と言われた。

あれれ、そのせりふ、どっかでよく聞いたなあ…、と思っていたら、不意に思い出した。

私が幼い子供と2人だけで暮らしていた母子家庭時代の頃だ。

そのときも「2人だけでは、お寂しいでしょうねえ」と、周りからよく言われたものだ。

正直に言えば、当時は一日一日をなんとか暮らすので精いっぱい、寂しいなどと思う暇などなかった。

今も全然寂しくはない。というのも、老いていく自分と日々、たたかっていなくてはならないから。

ちゃんと暮らしていくにはしっかりしていなければならない。

ともかく、気を抜いてぼーっとしていたら、自分が分からなくなってしまうのだから大変なのだ。

高齢になれば、もっと日々がお気楽になるものとばかり思っていた私としては、老いの現実を前にして、なすすべもなくうろたえてしまっている。

とくに年齢を重ねるにつれて、認知能力がこれほど低下してしまうとは、思ってもいなかった。

しかも、そんな状況にもかかわらず、スマートフォンだなんだと新しいものが次々と登場してくる。

それらを使いこなせないと、生活に支障をきたす。

そう、70歳も過ぎれば、もっとのんびりと、おっとりと、気ままに暮らせると思っていた。

そして、まわりの人ともつかず離れずで、葛藤なく付き合っていけるものと思っていたのに。

人生を生き切るというのはなかなかに大変なことのようだ。(ノンフィクション作家 久田恵)

ひさだ・めぐみ 昭和22年、北海道室蘭市生まれ。平成2年、『フィリッピーナを愛した男たち』で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。介護、子育てなど経験に根ざしたルポに定評がある。著書に『ここが終の住処かもね』『主婦悦子さんの予期せぬ日々』など。

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