作家を目指すドローン撮影の第一人者 カメラマン・妹尾一郎氏 100歳時代の歩き方 私の後半戦
産経ニュース / 2024年6月30日 9時0分
流行の最先端を走っていたカメラマンは、50歳を超えてドローンをきっかけにドキュメンタリー映像の世界に入った。恩人への尽きぬ思いをしたためた本を出版してからは「執筆に生きよう」と決意。還暦を過ぎ、駆け出しの気持ちで作家を目指している。
先日、僕が書いた小説が、とある賞の準大賞に選ばれました。両親を失ったウクライナの少年がドローンを使ってロシアに復讐(ふくしゅう)する物語です。今秋の出版に向け、今、推敲(すいこう)を重ねているところです
《大学生のころから出版社でカメラ助手のアルバイトをし、23歳でフリーになった》
「anan」「POPEYE」を出していたマガジンハウスです。時代への影響力がすごかった。厳しい指導の中、「いつか一人前のカメラマンになる」とがむしゃらに働きました。有名人の撮影や雑誌の表紙の仕事も増え、収入も右肩上がり。時はバブルで、座っただけで1万円しそうな銀座のすし店でごちそうになったり、マージャンをしたり。おもしろおかしく毎日を送っていました。
「恩人」との出会い
《平成14年に会社を設立。大きな仕事の依頼も来たが…》
経験で仕事をこなせるようになってしまった。どうにも気持ちがときめかない。駆け出しのころのがむしゃらな気持ちがなくなっていました。社長になって、経営とか管理的な仕事が増えたこともストレスの種でした。
《そんなときドローンと〝恩人〟に出会った》
僕は新しい物好きで、店でドローンを勧められ、即購入しました。十数年前当時、日本でドローン撮影している人はほとんどいなかった。そのとき店に偶然居合わせ、「俺も買う」と言ったのが、あるベテランカメラマンでした。
《26年、そのカメラマンからNHKBSの自然番組「グレートネイチャー」でのイラン取材に誘われた》
僕がドローン撮影の腕を上げていたので、連れて行こうとなったみたいです。僕はずっとポートレートやファッション写真を撮ってきたけど、世界には行ってみたかった。気が付けばイラン行きの飛行機に乗っていました。
《番組で流れた、イランのシレツ渓谷を俯瞰(ふかん)するドローン映像は感動的だ》
ドローンという言葉もあまり知られていないころです。あんな映像は当時ほとんどなくて、スタッフも驚いていました。視聴率もとても良かった。
《誘ってくれたカメラマンの生き方にも感化された》
温かい人なんです。もともと報道カメラマンで、黙って世界の戦災孤児に寄付をしていた。病を抱えたまま世界を撮り、亡くなったのですが、彼はいつも「好きなことだけをして過ごした一生より、苦しくても辛(つら)くても、人としてするべきことをしたという一生でありたい」と言っていました。おもしろおかしく生きてきた僕は衝撃を受けた。自分は人としてすべきことをしてきたのか? 人生をリセットしようと決めました。
自分のことを書いて
《社長業を譲り、トルコのシリア難民キャンプに足を運び、寄付をした》
彼とのことを残しておきたくて、文章なんて書いたこともないのに『ドローンマン』を一気に書き上げ、出版しました。「感動した」という声をいただき、自分の人生を肯定されたようで僕自身が感動した。それに、書くと人の心の奥底まで考えるようになる。気づけば書くことに、駆け出しカメラマンのころと同じような、がむしゃらな情熱を傾けていました。図書館で本を読みあさって勉強し、応募してはボツやダメ出しの連続。やっと準大賞受賞で、出版準備にまでこぎ着けました。
《後半生は小説家に向けて走り出した》
僕は心配性で用心深い。その心配の種が本を書いたらなくなった。自分にとって何が大事で何が不要か分かったからです。人生の後半戦が不安な方、自分のことを書いてみたらどうでしょうか。
(聞き手 小川記代子)
妹尾一郎
せのお・いちろう 昭和36年、山口県生まれ。日大芸術学部卒業後、マガジンハウス「anan」でデビュー。ファッション誌を中心に活躍、ドローン撮影のエキスパートでもある。著書に、小学館ノンフィクション大賞の最終候補に残った原稿を出版社に持ち込んだ『ドローンマン』(イースト・プレス)。
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