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ジャージー乳で作ったアイスに法体の滝、謎の大陸将軍の墓 鳥海高原で緑の風に吹かれる  味・旅・遊

産経ニュース / 2024年6月22日 10時0分

残雪がまぶしい鳥海山の北麓、秋田県に広がる鳥海高原(由利本荘市、にかほ市)を訪ねた。雪解けの水しぶきが鮮烈な法体(ほったい)の滝を間近に眺め、新緑の風に吹かれながらしぼりたてジャージー乳で作った濃厚なチーズやアイスクリームを堪能。里の古刹(こさつ)では奈良時代に大陸から遣わされた将軍の墓に出合い、秋田の歴史の奥深さを改めて思い知った。

雪解け水のしぶき

日本の滝百選にも選ばれている法体の滝は全3段の落差57メートル余りで、下から見えるのが最大の三の滝。巨大な岩盤を鳥海山の雪解け水が白いしぶきを上げて流れ落ちる。これを駐車場から目の前に見られるのだ。

平安時代、ここを訪れた空海が滝から現れた不動明王に拝礼したと伝わるだけに、すそ広がりの滝は仏像のようにも見える。朱色の吊り橋を渡り、急階段を登った展望台からは二の滝、一の滝、さらに上流の玉田渓谷も見渡せる。

滝つぼから流れ出た清流は日差しを受けてエメラルド色に輝き、森を縫うようにゆったり流れる。キャンプや水遊びができる岸辺の園地でしばし風に吹かれる。全身が洗われるような高原ならではの爽快感だ。

滝の駐車場から下って観光道路「鳥海グリーンライン」を10分ほど走ると広さ100ヘクタールの花立牧場公園。「子供の国」をはじめ乗馬、宿泊コテージなどがあり、大小のため池には「逆さ鳥海」が映る。

隣接する花立牧場(約70ヘクタール)は小柄で茶毛のジャージー牛270頭を飼育し、かつては搾乳体験もできた。第三セクターが営むジャージーハウスカフェはこのミルクを使ったソフトクリームにエスプレッソコーヒーをかけたアフォガード(400円)やチーズトースト(500円)などを提供。瓶牛乳(900ミリリットル)は605円。「ジャージー乳自体が濃厚で甘みもあるので、他にはない味わいです」と担当者は話す。

牧場の佐藤俊弥代表(43)は「市営牧場を農事組合法人として引き継ぎ、両親らと運営しながら設備も整え牛の数を倍以上にした直後に新型コロナウイルス禍、そして戦争の影響や物価高で…まだまだこれから。この鳥海高原とうまいミルクをもっと多くの人に知ってもらうよう頑張る」と意気込む。

謎の大陸将軍の墓

グリーンラインを日本海に向かって南由利原から県道287号に。高原を下った鮎川沿いの里山は色とりどりの新緑におおわれ、錦の紅葉にも勝る美しさだ。その道沿いに立派な伽藍(がらん)の瑞光寺と、門前に「万箇(ばんこ)将軍の墓」の看板がある。

聞きなれぬ名の将軍は、108段の急な石段を上った寺の裏山に眠っていた。コケむす墓石わきに説明板がある。聖武天皇の天平5(733)年、暴風雨で船が難破した大陸の使節が、陸路を寺までたどり着いたが、特使の将軍はここで病没。当時の住職が手厚く葬り、将軍の遺言で献上品を都に届けたという。

高橋利寿(りじゅ)住職(70)は「南北朝時代の合戦で寺は焼けて詳しい記録は残っておらず、どこの国かもわからないが、万箇とは万騎を率いた立派な将軍の意。享保18(1733)年に1千年忌を営み、今も供養を続けている」と話す。

大陸にあった渤海(ぼっかい)国(7世紀末に中国東北部を中心に建国)の使節を上陸地でもてなすため、朝廷が出羽柵(でわのさく)(朝廷が設けた役所機能を持つ拠点)を山形・庄内から秋田市の秋田城に遷(うつ)したのが天平5年。名も知れぬ将軍は、渤海使だった可能性が高い。

友好国渤海の縁(えにし)が、秋田城だけでなく鳥海山麓にも人知れず残っていたことは、ちょっとした驚きだ。

(八並朋昌)

アクセスなど

法体の滝は由利本荘市鳥海町の国道108号から県道291号、70号を通って車で約30分。鳥海山ろく線終点矢島駅からタクシー40分。花立牧場公園は同15分。ジャージーハウスカフェは鳥海高原ユースパーク(0184・55・2605)、瑞光寺は同市町村木戸口52、同市観光協会(同24・6349)

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