動物愛護の気持ちを伝えたい 青森県黒石市「猫ハウス ごろにゃん」代表 直井初江さん 令和人国記
産経ニュース / 2024年11月24日 7時50分
青森県黒石市から弘前市へ向かう国道102号沿い。青い外壁に描かれたかわいらしい猫のイラストがひときわ目を引く。県立黒石高情報デザイン科の生徒の力作だ。「猫ハウス ごろにゃん」の代表を務める直井初江さん(59)は、さまざまな理由から飼い主のいない猫の保護活動や譲渡を通して動物愛護の精神を広めていきたいと意気込む。
◇
始まりは育ボラ
最初、県動物愛護センター(青森市)の子猫の育成ボランティア(育ボラ)をやっていました。保護された子猫が仲間にいじめられたり、食事も取れないなど、いろんな状態の子猫をボランティアに預けるのが育ボラです。
こうした経験をして当初の計画では、猫と触れ合える喫茶店を運営しようと思っていていろんな所を見に行ったりしていました。たまたま、黒石で猫の保護活動をやっている方と知り合いだったので、いろいろ話を聞くと何が一番困っているかというと保護した猫を譲渡させる手段がないことでした。猫の里親探しの一番の方法が譲渡会ですが、寒い日や暖かい日など関係なく、場所も転々とするので猫にも良くないんです。もともと、猫の喫茶店をやろうと考えていたので、どうせならここでお茶を飲みながら譲渡会もできるようになれば効率的にも猫の環境にも良いということで始めました。
猫は犬と比べて発情期が多いので数も増えますし、年間の殺処分も犬の3~4倍だそうです。猫の保護活動にはいろんな方法があり、里親を捜すのも一つだし避妊、去勢して地域猫として社会に戻すという考え方もあります。
涙が出るくらい感動
私が考える猫には2種類ありまして、大きく分けて外猫と家猫です。家猫は避妊、去勢して人間の元で一生を終えるのが一番の幸せです。より一層、きちんとした猫との向き合い方ができれば殺処分も減るだろうし、動物愛護にもつながるのではないでしょうか。
オープンして約半年ですが、県内だけでなく、秋田や岩手など遠方の方もかなり引き取ってくれます。子猫の時は病気をすると泊まりがけで世話をするんですが、元気になってその子たちが譲渡されて、飼い主の方が「大事にします」と言って去っていく時にやっぱり胸が締め付けられます。まるで自分の子供を旅立たせるような…。いろいろ思い出があるので、ジーンときて毎回、涙が出るくらい感動しますね。あと、里親とインスタグラムでのやりとりや譲渡した猫を実際に連れてきたり、近況報告などをして交流もしています。
ここに来れば猫をもらえるし、一緒になって保護猫を育てようという人も多くて5月から始めてこれまで70匹以上譲渡されています。この仕事を始めてから猫のかわいらしさ、性格が分かるようになりましたね。やっぱり気付いたのは今までの譲渡会の在り方、方向性は猫の良い所を出し切れていないとすごく感じます。私たちのやり方は間違っていないんじゃないかな。
老人ホームの慰問も
高齢化社会で、これからますますお年寄りが多くなります。施設の方が「入居する人が猫を飼っているんですが、どうにかなりませんか」と相談に来るケースもあります。急に倒れて病院に入った時や施設に入居した時は当然、猫はダメということになります。親族が飼えれば良いですが、必ずしもみんながそうじゃないですよね。では猫をどうするかとなった時に飼うのではなく、動画などを通して幅広く発信することで「一緒に暮らしてくれませんか」という呼び掛けをして譲渡につなげる活動もやりたいと思っています。
これからの夢、目標としては、猫の譲渡もそうですけど、ここの施設を直して近くの幼稚園の園児に猫を見せたり、老人ホームへの慰問の活動もしたいですね。それも保護活動の一環だと思います。動物が人にもたらしてくれる癒やしの部分を通して、動物の持っている独特のパワーを感じてほしいです。
(聞き手 福田徳行)
なおい・はつえ 昭和40年、青森県黒石市出身。飲食店経営後、家族で今年4月「猫ハウス ごろにゃん」開業。開店時間は午前11時~午後7時。月曜定休。入場料は大人600円、大学生以下400円、小学生未満無料(いずれも30分まで)。旅行などで留守にする人のために猫を預かるキャットホテルも開業。
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