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能登半島地震で壊れた陶器をアクセサリーにアップサイクル 生まれ変わった九谷焼が人々を笑顔に

産経ニュース / 2025年1月28日 11時44分

能登半島地震で被災した老舗窯元「鏑木商舗」の九谷焼=12月20日午後、京都市伏見区

令和6年1月1日に発生した能登半島地震では多くの伝統工芸品が被害を受けた。石川県南部で作られている九谷焼も、割れたり欠けたりして売り物にできなかった製品が多い。そういった九谷焼に、陶磁器を修繕する技法「金継ぎ」を施し、ピアスやネックレス、帯留めなどに「アップサイクル(創造的再利用)」したアクセサリーが話題を集めている。新たな価値を吹き込まれたアクセサリーが、人々に笑顔をもたらしている。

金色に縁どられた色とりどりの陶片のアクセサリーは、顔周りに着けると、ぱっと華やかになる。形が不ぞろいで一つとして同じものはなく、お気に入りの商品を見つけるのが楽しい。

「辛かったものからうれしいものに作り替え、たくさんの方の笑顔につながればという思いで制作している」

京都市伏見区にアトリエを構えるアクセサリーブランド「engrace(エングレース)」の赤沼奈津香さん(48)は、九谷焼をアップサイクルしたアクセサリーについてこう話す。

赤沼さんはもともと、商品にならなかった陶器を全国の窯元から買い取ってジュエリーに加工して販売していた。能登半島地震の発生後、被害を受けた九谷焼の窯元やギャラリーを報道で目にし、「(九谷焼の)再興の役に立てるかも」と支援を考えた。

震度5強を観測した金沢市にある老舗窯元「鏑木(かぶらき)商舗」では、店頭や倉庫、作業場などにあった九谷焼がドミノのようになぎ倒された。

同窯元の鏑木基由(もとよし)社長は「分かっているだけで数千万円分の九谷焼が割れた。被害は計り知れないほど甚大だった」と振り返る。

赤沼さんからアクセサリーへのアップサイクルの提案を受けた鏑木さんは「熱心に話をしてくれたから」と、商品化を決めた。赤沼さんは地震発生から約1カ月後、同市に足を運んで九谷焼を持ち帰り、アクセサリー190点にアップサイクルして無償提供した。同窯元が東京都内で行ったイベントで販売したところ、完売するほどの反響を呼んだという。

鏑木さんから預かった九谷焼は、かけらになったものから、一見すると売り物のような美しい陶器までさまざまだった。赤沼さんは、陶片の色絵を吟味し、天然石やパールと組み合わせて、九谷焼の魅力を引き出すことにこだわった。

これまでに被災した九谷焼は約3500点のアクセサリーに生まれ変わった。現在は赤沼さん以外の作家3人にも加工を依頼し、約6千点の製作を見込み、収益の一部は被災した犬や猫の餌代などに充てている。

震災から1年以上がたち、預かっている九谷焼も徐々に減っている。赤沼さんは「自分の役目が終わるのはいいこと。少しでも復興の力になれば」と話した。(石橋明日佳)

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