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脳梗塞きっかけに開発したバリアフリー帯で伝統文化守る「さくら着物工房」鈴木富佐江さん

産経ニュース / 2024年7月12日 21時35分

帯の仕立てを教える鈴木富佐江さん(左)=東京都調布市「さくら着物工房」(塚脇亮太撮影)

「障害があっても、いくつになっても着物を楽しみたい」。そんな自身の思いをかなえるため、簡単に結べる着物の帯を開発した女性がいる。「さくら着物工房」の主宰、鈴木富佐江さん(87)だ。その手軽さは日本の伝統文化である着物を後世に継承することにもつながるはずだと、鈴木さんは10人ほどの仲間の講師とともに技術を伝え続けている。

高度な技術不要

京王線柴崎駅を出て徒歩5分。閑静な住宅街にさくら着物工房がある。月に6回ほど、着物の仕立て教室が開かれている。

教室に通う生徒らの一番の関心は鈴木さんが考案した「造り帯」という技術だ。帯を切らずに折り、要所を糸で留めるだけで、正装手結びの太鼓が再現できるというもの。高度な裁縫の技術も必要なく、糸を切れば元の帯に戻る。手結びでは調整が難しい帯柄の配置も、造り帯に仕立てることで、見せたい位置に見せたい柄を持ってくることができる。

「女性下着はサイズが分かれているのに、じゅばんが調節できないのはおかしい」。着物の下に着用するじゅばんにも工夫を凝らし、ボタンをつけてひもがなくてもバストに合わせて調整できるようにし、着用時の息苦しさを軽減。さらに、ファスナーで襟を取り外せるようにして、じゅばんを自分で洗濯できるようにもした。

幼少時から着物は特別

鈴木さんにとって、着物は幼いころから特別なものだった。両親に「相手に敬意を表する際は着物を着なさい」と教えられて育ち、歌舞伎鑑賞や仕事の得意先とのパーティーの際は必ず着物を着ていった。

金融会社を定年になった後、65歳のときに病魔に襲われた。脳梗塞で、右手が思うように動かすことができなくなったのだ。生活の一部でもある着物が着られなくなり、当初は絶望したという。それでも鈴木さんは「欲しいものが売っていなければ自分で作ればいい」と前を向いた。

誰でも簡単に着物が着られる方法がないか模索した結果、折り紙から着想を得て生まれたのが造り帯だった。まさに必要は発明の母で、障害の有無や年齢に左右されない着物のバリアフリー化が実現したのである。

教え子1000人以上

70歳のときに設立したさくら着物工房は今年10月で18周年を迎える。造り帯やファスナー付きじゅばんは特許庁から特許が認められ、今や鈴木さんの教え子は1千人以上にのぼる。鈴木さんの思いをつないで講師となった人も全国に存在する。

鈴木さんの今の目標は「着物文化を守ること」。晴れの日に限らず、着物がより親しみやすいものになってほしいと強く願う。

鈴木さんは3月、自身の半生を描いた著書を出版。タイトルは「幾つになっても人生はこれから!」(致知出版社)。

「元気な年寄りのリーダーとして長く生きたい」

着物文化の発展に向けて、鈴木さんの歩みは止まることはない。(塚脇亮太)

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