萩本さんの言葉を胸に 僕の「東京喜劇」を作る 今後は年齢考えず、小倉君とバック転でも 話の肖像画 喜劇役者、劇団SET主宰・三宅裕司(73)<30>
産経ニュース / 2025年1月31日 10時0分
《昨年はスーパー・エキセントリック・シアター(SET)の創立45周年だった。記念公演として、「ニッポン狂騒時代~令和JAPANはビックリギョーテン有頂天~」が、東京・池袋のサンシャイン劇場などで行われた》
1960年代、アメリカのロックンロールを日本語に訳したカバーポップスというのがあり、その訳詞を書いた漣(さざなみ)健児さんの人生を基に舞台化したのが「ニッポン狂騒時代」です。
《漣氏の代表作には「可愛(かわい)いベイビー」(歌・中尾ミエ)、「ヴァケーション」(歌・弘田三枝子)などがある》
漣さんの人生を基にしたストーリーに、同じころに全国の大学を席巻した日米安全保障条約(安保)に反対する学生運動へ参加する学生を絡めました。米国の文化を取り入れている青年と、米国の言う通りにするなという青年の対立です。
その2人に女性が絡み、その両方の人生を描きながら、現在の令和の日本を考えたいというテーマでした。
《舞台は長谷川慎也、栗原功平、山城屋理紗の3氏をメインにすえ、小倉久寛氏が主役の父親で会社社長、その秘書を三宅裕司氏が務めた》
まさか、SETが45年も続くとは思ってもいなかったですし、45年たってもサンシャイン劇場クラスの大きな会場で公演ができるとは思っていなかった。でも、これからもっとSETを大きくしたいですね。
《病気を機に「東京喜劇」をやろうと決めた三宅氏だったが―》
「そもそも東京喜劇って何だろう」と悩みました。一般的には戦前や戦後まもなく、浅草で人気を博したコメディーやボードビル(軽演劇)、人情喜劇を思い浮かべますよね。
ただ、ああいう浅草の笑いの文化って、ほかに何もない時代のものですから、とにかく面白さを目指していったのではないかと。今の大阪の新喜劇のように、個性のある人がおなじみのギャグで爆笑を誘う、というのがあったんだろうと想像します。
その後、映画の時代があってストーリーで感動するとか、いろいろなバンドが出てきて音楽が楽しいとか、多くの要素があるエンターテインメントの中で育っている人たちの感覚とは違うと思うんです。
たくさんの娯楽に囲まれて育ってきたお客さんが楽しめるものとは何だろうか。
僕はテレビっ子の最初の世代です。幼稚園のときにはテレビがあって、それをずっと見てきました。
テレビの中には笑いもあるし感動もある、いい歌もあるし、泣かせる芝居もある。アクション映画もトークも落語もある。その中から面白いものを選んでいったわけです。
そうしたものを全部盛り込んだのが、SETの掲げる「ミュージカル・アクション・コメディー」です。
コメディアンの萩本欽一さんに「東京喜劇を作りたいのですが」と相談をしたことがあるんです。萩本さんは「浅草の軽演劇を知っている人はみんな死んじゃってもういないから、三宅ちゃんが東京喜劇だと思うことをやれば、それがこれからの東京喜劇になると思うよ」と言ってくださいました。
「東京喜劇とはSETでやってきたこと、伊東四朗一座、熱海五郎一座でやってきたことでいいんだ」と思えて、すごく心強かったですね。
次の目標はまず、SETの50周年ですね。どうなるんでしょう。自分の年齢は考えずにやります。小倉君と2人でバック転でもするかな。(聞き手 慶田久幸)
◇
明日からは経済アナリスト、森永卓郎さん。森永さんは28日、原発不明がんのため亡くなりましたが、令和6年12月の取材をもとに掲載いたします。
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