80歳超えた平均寿命 75歳定年、子育て世代への長期育休を 東北大大学院の吉田浩教授 世界線の歩き方
産経ニュース / 2025年2月12日 8時0分
選択次第であり得たかもしれない、この現実とは異なるもう一つの現実。それは今、「世界線」と呼ばれるようになった。産経新聞ではこの言葉を手がかりとして、時代を象徴する5つのキーワード(インターネット、コンプライアンス、豊かさ、結婚、戦争)を考察する連載を展開してきた。より善(よ)き未来へと通じる「世界線の歩き方」とは、どんなものだろうか。最前線で思索する識者とともに、今一度考えてみたい。
日本の子供が「1人」になる日
《自身が考案した「子ども人口時計」では、695年後に日本の子供が1人になると算出されている》
少子化の深刻さを理解してもらうため、状況を可視化する狙いがあった。現在の数値は昨年4月1日時点の試算だが、前年から一気に100年ほど早まった。時間的な余裕はない。
日本で1人の女性が生涯に産む子供の数は「合計特殊出生率」で示される。子供が増えるためには両親となる2人が生まれなければならないので、「2」以上が必要だ。しかし、1975年ごろに「2」を下回って以降、ブレーキがかからない状態が続いている。これを元に戻すのは大変なことだ。
「子育てモラトリアム」で育児環境整備
《少子化は社会の発展にともなって、起こるべくして起こった現象か》
例えば、フランスの出生率の推移をみると、1960年代以降に低下し、90年代から持ち直している。フランスは家族政策に対する財政支出も大きく、社会の多様化も進めて、少子化対策が功を奏した例だろう。
一方、くしくも旧枢軸国の日本、ドイツ、イタリアは低迷が続く。フランスなどとの文化的な差異に注目する見方もあるかもしれないが、私は時代の要請に政策が追いつかず、社会環境が整っていないためだと思う。
日本政府は「異次元の少子化対策」といってはいるが、これまでの次元での延長線上にある政策がほとんどで、異次元といえるものではない。
《では、どのような少子化対策を行うべきか》
「子育てモラトリアム(猶予期間)」という考え方を提唱したい。
1960年代のライフコース(人生の道筋)は、18歳で高校卒業後に就職、60歳で退職する人が多かった。平均寿命は65歳から70歳。それが現代は20代半ばまで大学に通い、65歳で退職、という人が多い。平均寿命は男性が81歳、女性は87歳だ。寿命の延びに対し、退職時期の延長がアンバランスだといえる。
退職を75歳まで延ばし、若い頃に育児のためにしっかりと休む。2年間と3年間と分割してもいいだろう。出生率を伸ばすには、大胆な社会環境の変化が不可欠だ。
「戦争」から「経済」へと変化
《国を維持・発展させるのに人口は欠かせない。その意味合いはどう変化しているか》
近代以前の「戦争」の時代には、それが兵士の数に直結する故に、人口が国力の指標となっていたといえる。現在は、もちろん世界各地で戦争は起きてはいるが、より経済力、一人一人の「豊かさ」が重視される時代になっている。
力仕事が重要となる農業経済や工業経済が中心の社会では、男女の役割分担は経済効率性の観点から、一定の意味があった。だが、現代は経済上からみても、ホスピタリティ(もてなし)や寄り添うケア(寄り添い、世話)などが重視される社会だ。
産業構造も、肉体労働からサービス業を中心とした「ホスピタリティ産業」にシフトしてきている。こうした仕事に、男女の格差は少ない。
「男女共同参画」は、憲法に書いてあるから必要なのではなく、国家や社会を持続していくために不可欠であるということを理解することが重要だ。時計の針は戻らない。女性や高齢者が就業できる環境を整え、全ての人が「総活躍」する社会をつくらなければ未来はない。
◇
よしだ・ひろし 昭和39年 東京都生まれ。一橋大大学院博士課程満期退学。専門は加齢経済学・公共経済学。東北大大学院経済学研究科助教授を経て現職。会計検査院特別研究官、経済企画庁経済審議会特別委員などを歴任。著書に「男女共同参画による日本社会の経済・経営・地域活性化戦略」(河北新報出版センター)など。
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