ベンチャーズに「しびれた」中学時代 話の肖像画 喜劇役者、劇団SET主宰・三宅裕司＜3＞

中学2年生のころ

《小学校は千代田区立西神田小学校（現在は統廃合されてお茶の水小学校）。成績は良く、学級委員を務め、そのうえ目立つことが大好きな少年だった。母親の影響で日本舞踊を習い、ステージで拍手をもらうことが快感になっていた三宅さんだが、そのステージ上でちょっとした騒動が起きた》

区内の全小学校が集まって音楽会に参加したときのことです。会場は九段会館だったかな。父がアコーディオンを持っていて、私も「荒城の月」だけ弾けました。それをどこかで披露したのを音楽の先生が見ていて、「三宅くん、音楽会でオルガンをやりなさい」と指名されました。

先生に言われたらやるしかない。でも、アコーディオンで1曲しか弾けないのに、オルガンなんてできるわけがない。

譜面を見てオルガンを弾いているまねだけしていたんですが、音楽会が終わったら、後ろに立っていたやつが「あれ、三宅くん、隣の人と全然違うことやっている」って、バラしちゃって。

《音楽会では痛い目に遭った三宅さんだが、区立一橋中学校へ進むと、ザ・ベンチャーズの洗礼を受けることになる。ザ・ベンチャーズは米国のインストゥルメンタル・ロック・バンド。1960年代、本国より日本で大人気となった。エレキギターのネックを指でスライドしながら、弦をピックではじく「テケテケ奏法」が代名詞。代表曲に「パイプライン」「ダイヤモンド・ヘッド」「キャラバン」など》

1年生のときに東京厚生年金会館で行われたコンサートに行きました。2度目の来日でした。フェンダーのたいして大きくないアンプ（ツインリバーブ）が客席に向けて置かれていて、モズライトのギターで、ものすごくいい音なんですよ。あのサウンドに〝しびれて〟しまって。

そのライブが「ザ・ベンチャーズ・イン・ジャパン」というLPレコードになって。赤いレコード盤です。もう何回も聴きました。特に「キャラバン」のギターソロをコピーしようとしましたが、速弾きで難しくて。

学校ではエレキギターが禁止されましたが、バンドを作りました。

リードギターのやつの家が「三崎町食堂」という店をやっていて、その屋上の部屋で練習するんです。

隣が日本大学の校舎で、昼間に練習すると、部屋といっても掘っ立て小屋みたいなところですから、音が漏れる。日大側から「うるさい」と言われて、いつも警察を呼ばれました。

《当時、ロック、エレキギターは不良の聴く音楽だとして、禁止している学校も少なくなかった。1966（昭和41）年にザ・ビートルズが来日した際も、コンサートへ行くことを学校から禁止されたファンもいたという》

三崎町食堂の1階でクリスマスパーティーもやりました。

蛍光灯に色の着いたセロハンを貼って、色紙で輪っかを作って。私の家が印刷をやっているからパーティー券を印刷して。パーティーではザ・ベンチャーズの曲を演奏しました。

ときどきバラードで「チークタイム」を入れるんです。中学生ですから、体がほとんど離れているんですけれど、人気なんです。チークタイムで演奏するのは加山雄三さんの「君といつまでも」でした。

パーティーは、企画しているときや輪っかを作っているときからワクワクしていましたね。お金もうけより、みんなが楽しんでいる姿を見るのが好きなんです。

それにバンドをやっていると女の子にもてますしね。（聞き手　慶田久幸）