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クリスマスシーズンに間に合うか イチゴの花芽の生育遅れる パティシエらもやきもき

産経ニュース / 2024年11月14日 7時30分

ホテル雅叙園東京の「嘉山農園の苺ショートケーキ」(直径12センチは5000円、直径15センチは6000円)の見本品。このイチゴをクリスマスシーズンに同農園産のものと入れ替えて商品化する(竹中文撮影)

クリスマスケーキの主役、「イチゴ」の生育は、間に合うのか-。パティシエがやきもきする日々を送っている。今年は、秋に入っても暖かい日が続いたため、実を結ぶ前の花芽の生育が遅れ、産地によっては影響が出たのだという。

「苦渋の決断でした」

「イチゴの開花が遅れ、クリスマスケーキ用の納品数が注文を受けた個数より少なくなるかもしれない」

苦悩の胸の内を語るのは「嘉山農園」(神奈川県横須賀市)で働く嘉山弘一さんだ。

取引先には10月、納入個数が減る可能性もあると通知した。「望まれている個数を納めたいという気持ちがあったので、苦渋の決断でした」と話す。

嘉山さんが働く農園では今秋、「とちおとめ」「紅ほっぺ」を計10万株ほど栽培。このうちクリスマスケーキ用に出荷予定なのは「とちおとめ」だ。

しっかりした果肉の歯応えや強い酸味に定評があり、今年もホテルや洋菓子店など約10社からクリスマス用のイチゴの注文を受けている。ところが今年は秋に入っても気温が高く、花芽の生育に影響。通常、10月下旬から徐々に花が咲くというが、「下旬になっても開花がちらほら。11月に入ると花は増えてきましたが、例年はもっと咲いているので心配です」と嘉山さんは声を落とした。

野菜や果物の産地直送コーナーを全国のスーパーで展開する農業総合研究所(和歌山市)の広報担当者も「今秋は暖かい日が続いたため、奈良や岐阜の生産者からも花芽の生育が遅れているとの声が寄せられていた。例年は11月初旬にはイチゴの出荷が始まる。しかし今年は例年より遅れている」と明かす。それでもクリスマスシーズンにたくさん収穫できるように育てる努力を重ねているという。

不安漏らしつつも…

パティシエも気をもんでいる。ホテルインターコンチネンタル東京ベイ(東京都港区)のエグゼクティブシェフパティシエ、永井翔也さんは「イチゴの選定で試行錯誤し、今のところ産地を確定していない。暖秋などの影響でもし『納品ができない』といわれたら困ってしまう」と話す。

今年の新作「ホワイトクリスマスショートケーキ」は土台のスポンジにシロップを塗り、その上から生クリームをたっぷりと絞る。「どんなイチゴでも対応できるように、シロップの増減で甘みのバランスを整えるつもり」という。

嘉山農園のイチゴを使うクリスマスケーキを提供するホテル雅叙園東京(目黒区)は収穫状況を注視している。ペストリー料理長、生野剛哉さんは「イチゴの個数が確保できるのか」と不安を漏らしつつも「ここのものは酸味と香りが抜群。このイチゴでなければ、クリスマス用のショートケーキは出せない」と話す。生野さんは農園を訪ねて生産者と連携しながら、イチゴの実がなるのを心待ちにしている。

「味」と「価格」を重視

今年のクリスマスケーキは、デザインより「味」と「価格」重視のものが人気に-。こんな調査結果を、スイーツ専門通販サイト「Cake.jp(ケーキジェーピー)」の運営会社が発表した。

10~70代の男女を対象にした9月の調査で301人から回答を得た。クリスマスケーキ購入の際に求める要素を複数回答で聞いたところ、「味」が87%でトップ、「価格」が62.5%で続いた。

また、約5人に1人が、「王道のショートケーキタイプ」を購入したいと答えたという。広報担当、佐藤さくらさんは、「イチゴとスポンジとクリームというシンプルな構成で、どの世代も味になじんでいる」とショートケーキの魅力を語った。(竹中文)

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