山下奉文率いる陸軍の独視察団、陸海軍統合構想を提言 対米英戦直前「喫緊かつ不可欠」
産経ニュース / 2024年8月16日 16時9分
米英などとの開戦を控えた昭和16(1941)年、同盟国ドイツを訪ねた日本陸軍の視察団が、陸海軍の統合運用などを軸とする国防機構の一元化を強く訴えていたことが、防衛省防衛研究所が所蔵する同年7月の視察団報告書で明らかになった。第二次世界大戦下で緊迫する国際情勢を踏まえ、報告書は陸海軍が保有する航空戦力を統合した空軍の新設も唱え、陸海空3軍一元化の「絶対性を痛感する」と強調したが、組織内の路線対立などで実現しなかった。
現在、各国では指揮系統の効率化や統率強化を図るため、各軍の統合運用が主流となっており、日本も今年度末、陸海空3自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」を新設する。
報告書によると、視察団は、昭和16年12月のマレー作戦を指揮し「マレーの虎」の異名を持つ山下奉文(ともゆき)陸軍中将(当時)を団長とし、同年1~6月に訪欧。ドイツは昭和14年のポーランド侵攻以降、欧州各国を占領し、翌15年にはフランスの首都パリを陥落させていた。一方、12年からの日中戦争などを巡り、日本は米英両国との対立が深まっていた。
報告書では、第二次大戦初戦におけるドイツ電撃戦の背景を検証し、近代戦での航空兵力の重要性に着目。日本においても、陸海軍が持つ航空戦力を独立させ、空軍を新設すべきだと唱えた。また「現在、将来の世界情勢に対処するため、反省革新を要すべき時期」だとして、3軍の一元化の重要性を強調した。その上で政府内の軍政組織である「国防省」と、作戦指揮をつかさどる軍令組織としての「国防本部」の設置による国防機構一元化など、日本軍組織の抜本的改革を提言した。
当時は航空機の登場で作戦が複雑化し、視察団は統合運用の必要性を痛感したとみられ、緊迫した情勢に対処する「喫緊かつ不可欠の要素」と訴えている。
しかし16年12月、日本は対米英戦に突入。日本軍は天皇直属の大本営でも陸海軍が個別に作戦を立案するなど両軍の対立が顕在化していたほか、陸軍内部でも路線対立があった。
報告書について、防衛研究所戦史研究センター史料室の松原治吉郎(じきちろう)主任研究官は「視察団の派遣はドイツに学び、国防機構を一元化することが、将来起こり得る戦争に対処するため必要だとの合理的な視点を陸軍が有していたことを表している。しかし、組織の壁や陸海軍の近視眼的態度、そして開戦により、結果として実現しなかった」と分析している。
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