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闘う総統、蔡英文氏との出会い 話の肖像画 モラロジー道徳教育財団顧問・金美齢<29>

産経ニュース / 2024年8月30日 10時0分

台湾総統選で勝利し、記者会見する民進党の蔡英文主席=2016年1月、台北(共同)

《2000年に誕生した民進党政権は、陳水扁総統が満期を迎えた08年の総統選で国民党の馬英九候補に敗れた。民進党は野党となり、新しい党主席に蔡英文氏が就任した》

このころはまだ蔡英文さんとは親しくなくて、李登輝さんにスカウトされて台湾大学卒の法律学者から政治に関わることになったということを知っていたくらい。その学者出身の彼女が、一番大変なときに民進党を引き受けることになった。このとき、蔡英文さんと交わした会話をはっきり覚えている。「あなた、よくこんなしんどい仕事を引き受けたよね」って聞いたら、「父が生きてたら絶対に許してくれなかったでしょうね」っていうのが返事だった。

蔡英文さんは裕福な家のお嬢ちゃんなの。しかも末っ子で、父親はこのできのいい娘がかわいくてかわいくてしようがない。そんな彼女が野党に転落したばかりの党主席選に出馬して当選したわけ。覚悟を固めての就任と思うけど、返事はお堅い決意表明ではなく、父親が存命なら絶対にイエスを出さなかったでしょうって。機知に富んだ子だなって感心したわけなのよ。

《蔡英文氏はその後、16年の総統選で国民党から政権を奪い返す。総統在任中はペロシ米下院議長(当時)の訪台を実現させ、自らも訪米して米政界の要人と会談。米台接近を嫌う中国の圧力に屈することなく、対米関係の盤石さを国際社会にアピールした》

訪米といっても国交がある中南米の国を訪問するっていうのが表向きの理由で、ちょっと乗り換えで降りましたっていう体裁。そうでなければ中華民国の総統を米国は受け入れられないから。米国にだって中国寄りの政治家はいっぱいいるしね。

ペロシさんのときも訪米のときも、中国は相変わらず、台湾周辺で激しい軍事演習を繰り返した。そんな嫌がらせにも屈することのない強さが蔡英文さんにはある。彼女が長い年月、東アジアの安定と平和に貢献してきたことを、日本を含めた民主主義の国々は感謝しなければいけないと思うよ。

《18年11月の統一地方選挙で民進党は敗北。責任を取って、蔡英文氏は党主席を辞任した》

みんながまた寄ってたかって蔡英文さんのバッシングをするわけ。そんなころ、私は民進党に呼ばれて台湾に行き、何かの選挙に立候補する人と壇上で対談かなんかをやったんだけど、そのとき私は言ったのよ。あなたたち、心ないよって。総統として大変な重荷を背負っている蔡英文さんに対して、なんやかんや批判する? ちょっと心ないよ、って。

そのイベントはメディアもいっぱい来てて盛大でね。それで私の発言が蔡英文さんに伝わり、直接会ってお礼が言いたいってメッセージが来た。私は台湾に帰ると日月潭っていう避暑地によく行くんだけど、帰り道に通る台中で彼女が講演するという。そこで彼女の秘書が私のホテルに迎えに来て、講演会場まで連れて行ってくれた。お礼を言われて家族全員で写真を撮ったんだけど、うちの孫娘が突然、「私、ツーショットがいい」って言い出したの。快く応じてくれたけど、誰に似たのか能天気なのよ、この孫娘は。

後日、蔡英文さんの公邸で食事をする機会があった。彼女はすごくペットが好きなのよ。公邸で犬とか猫とかを飼っているんだけど、私は動物が大の苦手でね。テーブルに飛び乗ってきたりするので「駄目なの」って言ったら、全部追い出してドアを閉めてくれた。普通は遠慮して我慢するもんじゃない。総統にペットを追い出してもらったのは私くらいかもしれないね。(聞き手 大野正利)

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