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「本のそばにおいで」児童文学者の松岡享子さん志継ぐ東京子ども図書館、大規模改修へCF

産経ニュース / 2024年12月4日 8時0分

子供と本をつなぐ場となっている東京子ども図書館=令和6年7月、東京都中野区

面白いお話、美しいお話を子供たちに語る人々が、これからも続いて出てきてほしい-。「くまのパディントン」シリーズなどの翻訳で知られる児童文学者で、令和4年に86歳で亡くなった松岡享子さんの志を継ぐ公益財団法人「東京子ども図書館」(東京都中野区)が、大規模改修の費用をクラウドファンディング(CF)で募っている。目標金額は3300万円。老朽化に加え新型コロナウイルス禍の休館で資料に傷みなども生じており、8年のリニューアルオープンを目指す。

人材育成担う

同館は戦後の高度経済成長期、松岡さんら3人の女性が都内各所で立ち上げた4つの家庭文庫が前身。「子供の読書」を専門とした私立図書館の先駆的存在で、今年、50周年を迎えた。

児童図書館としてだけでなく、子供の本や読書についての参考図書館・研究機関、子供の本に関わる仕事をする人のための研修機関としての役割も担ってきた。

米国の図書館で学んだ松岡さんが特に力を入れたのが、語り手が物語を丸々覚えて語り聞かせる「ストーリーテリング(お話)」の普及。勉強会や講習会を開催し、これまでに1千人を超える語り手を全国に送り出してきた。

現在の図書館は、寄付金を原資に平成9年に建設された。赤茶色のレンガ造りで、子供のための児童室や「お話会」専用の部屋、イベントのためのホールなどを備えた地上2階、地下1階の建物は、それまでビルの一角で活動していた職員ら関係者にとって、「長年の夢」の結実でもあった。

資料にカビ、水漏れも

地下1階にある資料室には、お話を学ぶ人のための国内外の昔話集など、貴重な資料が豊富にそろっている。ところが、コロナ禍で休館を余儀なくされた令和2年、人の出入りが減って空気の流れが止まったためか、資料にカビが発生。さらに、5年には老朽化した空調設備から水が漏れ、資料の一部がぬれてしまった。利用者や資料運搬のためのエレベーターも、定期点検で部品の劣化が判明した。

そうした中で4年、象徴的な存在だった松岡さんが他界。より利用しやすい施設を目指す今回のリニューアルでは、空調機やエレベーターの交換など喫緊の課題への対応に加え、訪れる人に松岡さんの足跡を紹介するコーナーも新設する。

「連れて行ってあげる」

CFのキックオフとなった11月18日には、中野区のホールで松岡さんのドキュメンタリー映像の上映会が開催された。

「私と一緒においで。おもしろいこと、不思議なこと、心がワクワクするようなことに出会いたいのなら、私が本のそばへ連れて行ってあげよう」。子供たちに、そう呼びかける大人であり続けたい-と語った生前の松岡さんの姿に、来場者は真剣な表情で見入っていた。

「本当に大きな挑戦。松岡さんが終生心を寄せた『子供と本の幸せな出会い』が未来へつながるよう、一同全力を尽くしてまいります」。会場では、同館の池添トモ子事務局長がこう語り掛け、支援を呼びかけた。(緒方優子)

寄付金の詳細はCFサイト(https://readyfor.jp/projects/tcl50)へ。目標額に達しなくても寄付金を受け取る「オール・イン方式」で、同館が51周年を迎える来年1月31日まで受け付ける。

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