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尖閣は日本国の尊厳にどれだけ大事か考えよ 「備え」政府が静かな形で政治的決断を 話の肖像画 元駐米日本大使・藤崎一郎<3>

産経ニュース / 2024年9月3日 10時0分

(関勝行撮影)

《中国の軍拡が止まらない。中国は台湾の武力統一の可能性も排除していない。だが、そうなると、日本は紛争に巻き込まれる。台湾有事や日本の対中国外交についてどう思うか》

私は正直、中国の習近平主席の優先順位は台湾ではないだろうと思っている。流血の惨事を引き起こしてまでね。ただもちろん中国国内が治まらないからそういうことをやって、国民の目を台湾に向けるという逆の計算はあるかもしれない。でもそうなれば、台湾だって一生懸命守るだろう。

今年1月の台湾総統選挙で、野党は、うまくやれば勝てたのに、候補者を一本化できずに負けた。中国はいずれまた、台湾が近づいてくる可能性を待つのではないか。一番、敵対する政権のときにあえてぶつかる必要はない。

ただ、「お前、もし変なことをしようとしたらやっつけるからな」と言っておかないと、台湾も米国も走りすぎてしまう恐れがある。だから、私は中国の肩を持つわけじゃないけど、中国が脅し続けるのは当たり前のことじゃないかと。

中国の立場で物事を見てみると、一番大事なのはナショナリズムを高揚させて政権の維持を図ることだろう。

米国のシンクタンクが台湾有事のシミュレーションをやり、32のシナリオがあって、日本が全然関与しないと大変な結果になるという、あからさまな結論を出す。そうすると、テレビも新聞もみんな大騒ぎ。

こういうシミュレーションはおそらく、日本はちゃんと関与しないといかんぞ、というメッセージを出すのが目的だろう。果たして32ものシナリオを考える必要があるのか。

《中国はロシアによるウクライナ侵攻の失敗に学んでいるか。日本は何をすべきか》

それより、私は尖閣諸島(沖縄県石垣市)の防衛がどういうふうになっているのか、気になる。尖閣諸島は無人島だ。多くの人が暮らし、自分たちの生活の場を守ろうとする台湾とは状況が大きく異なるだろう。

たとえば、ある日突然、夜陰に乗じてヘリコプターが尖閣上空にやってきて、落下傘を落として、無人島にずらっと人が立っている。それもみんな軍服なんか着てない。女の人とか子供とか、そういう人たちが、日中友好とかいう旗を掲げたときに、どうするのか。

日本側が退去させようとすると、上陸した人たちが銃で抵抗しようとする。補給が続かないと言うかもしれないけど、補給物資はいくらでも空から落とせる。ヘリを撃ち落としたら戦争ですよね。これはなかなか難しい判断となる。

《尖閣に自衛隊を駐屯させようという意見もある。日米共同で尖閣周辺の事態に対処する体制を構築することが何よりも重要だとの声もある》

最も重要な貿易パートナーである中国との関係は大事だ。決して無用な摩擦はすべきではない。でも、こんな事態が生じないようバリアーをつくるとか何らかの対策は未然に講じておくべきではないか。

それに対する中国側の理解はなかなか得られないだろう。しかし、日中関係が蜜月なときにはできない。今のようなときこそ、日本政府ができるだけ静かな形で政治的な決断をすべきだろう。

北方領土はロシアに占領されて79年、竹島は韓国に押さえられて70年余り返ってこない。尖閣は、日本の国としての尊厳のために、どれだけ大事かと考えなきゃいけない。英国は、領土奪還のために地球の反対側にあるフォークランド諸島まで行ったわけですよ。

日本は、よそさまのことよりも、まずは自分の領土を守ることを真剣に考えなくてはいけない。(聞き手 内藤泰朗)

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