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「椿発言」と僕の主義主張は違う 番組打ち切りに「僕があまりにも傲慢になっていた」 話の肖像画 ジャーナリスト・田原総一朗<25>

産経ニュース / 2024年10月26日 10時0分

「椿発言」を報じた平成5年10月13日付産経新聞1面の記事

《平成5(1993)年10月13日付の産経新聞は1面で衝撃的なニュースを報じた。テレビ朝日の椿貞良報道局長(当時)が会合で「非自民党政権の誕生を意図して報道した」という趣旨の発言を行った。これが「政治的中立」をうたった放送法に違反するのではないか、と指摘したスクープだった》

いわゆる〝椿発言〟かな。詳細は知らないけれど、椿さんも記者出身だから、新聞に対抗意識があったのだと思う。当時、新聞記者が(元年に始まった「サンデープロジェクト」などでの)テレビ報道を追いかけるような現象が起きた。それで思わず、こんな発言をしてしまったのでしょうかねぇ。

《5年8月に自民党政権に代わる非自民連立の細川護熙(もりひろ)政権が誕生していた。自民党サイドからは、テレビ朝日の報道番組の司会者2人の名をとって〝久米(※宏氏。「ニュースステーション」の司会者)・田原政権〟と揶揄(やゆ)する恨み節も聞こえてきたのだが…》

〝椿発言〟と僕の主義主張はまったく違う。(以前の回で話したように)僕がジャーナリストとして大事にしてきた3つの原則のうち、健全な民主主義をつくるために政権交代を可能にする―ということがある。

ただ、それは「自民党政権を潰す」ことが目的ではなく「日本の政治をよくする」ため。アメリカやイギリスのように二大政党制が根付いていると、常に政権交代の可能性があるし、そこに緊張感が生まれる。ところが日本の政治状況は、自民党政権がずっと続き、政権交代はめったに起きない。だから、「政治とカネ」の問題のようなことも起きるわけですよ。

つまり、野党がそれなりに強くならないと、自民党も情けなくなってしまう。「お互いが(緊張感を持って)監視し合う」ことで、日本の政治はよくなるだろう、と。僕が言いたいのは、そういう意味です。

でも、今の野党を見ていると、政権を取る気がないように見えて仕方がない。僕がある野党の複数のトップと会ったとき「政権奪取の絶好のチャンスじゃないか?」と持ち掛けたのに、この党とは組めない、などと否定的な態度だったことはすでに話しましたよねぇ。

《報道と倫理の問題では「TBSビデオ問題」(平成7年発覚)もあった。同局ワイドショーがオウム真理教を批判していた坂本堤弁護士のビデオをオウム側に見せ、直後に同弁護士が殺害された。「情報源の秘匿」に反する行動が問題視され…》

あのとき、筑紫(ちくし)さん(※哲也氏、TBS系『筑紫哲也NEWS23』の司会者)が「きょうTBSは死んだに等しい…」と発言しましたよね。僕は彼と親しかったけど、まったく正しいことを言ったと思います。

あの問題が公権力(政府)が放送に介入するきっかけをつくってしまった、って? 何度もいうけど、テレビは免許事業。常に公権力は介入してくる可能性がある。いざそうなったときに、どうやってケンカする(闘う)かが大事なんですから。

《テレビジャーナリズムを長らく背負ってきた田原さん。番組が、思いがけず「打ち切り」になって挫折を味わったこともある》

ショックでしたねぇ。局内の事情もあったのだと思うけれど、ひとつの理由は僕があまりにも傲慢になっていたこと。「(番組の放送日に)政治が変わる」なんて言われていい気になっていた。気に入らないことがあったら「(番組に)出ない」とゴネたりね。今は反省しきりです。(聞き手 喜多由浩)

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