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高齢者見守る「民生委員」の担い手足りず 人員確保へ居住要件の緩和も検討 これから 100歳時代の歩き方

産経ニュース / 2024年8月4日 9時0分

地域で高齢者や子供の見守り活動を行う民生委員の定員割れが続いている。人間関係が希薄になるなかで民生委員の重要性が増す一方、働く高齢者の増加や負担の大きさなどで担い手が不足しているのだ。確保策として、地域の住民以外に広げるなど要件緩和も検討され、民生委員のあり方が問われている。

「大きくなったね」。赤ちゃんを囲んで笑顔を見せる高齢男女。母親たちも会話を交わしている。

横浜市中区の飲食店の一角で行われていた「おしゃべりサロン」。高齢者や子育て世代の交流の場として、地区の民生委員が毎月、開催している。

開催する民生委員の一人、一宮均さん(73)は平成28年から活動している。自治会の会長も務め、長年、地域の課題に取り組んできた。

地域には1人暮らしの高齢者が多く、孤独死も少なくない。一昨年末には、一宮さんが担当していた80代の男性が自宅アパートで亡くなっているのが発見された。「その1カ月前に安否確認で訪問したときは元気だったのに」と声を落とす。

民生委員は一定の要件を満たした人が推薦され、厚生労働相から委嘱される非常勤で特別職の地方公務員。交通費などの実費は支払われるが、無償のボランティアだ。

児童委員と兼任し、高齢者などの安否確認や見守り、子供たちへの声かけのほか、医療や介護、生活に関するさまざまな相談に応じ、行政など関係機関へのつなぎ役を担う。任期は3年で、再任も可能だ。1人当たり200世帯前後を担当することが多い。

1人暮らしの高齢者の増加や子育て家庭へのサポートで、地域の相談役である民生委員の存在意義は大きい。しかし、全国で定員割れが生じている。令和5年3月末時点で定数24万547人に対し、22万7426人、充足率は94・5%。東京都が88・5%、大阪府が91・2%などとなっている。

担い手不足の背景には、高齢化で適任者が見つからない▽高齢になっても働く人の増加▽民生委員の活動内容が知られていない▽深刻化する民生委員の仕事内容への負担感-などがあるとみられる。

法律では民生委員の要件として、その市町村に一定期間住んでいることを挙げる。厚労省は都市部の要望などもあり、その市町村に住んでいない在勤者や近隣に転居した元住民にまで居住要件を緩和するかどうかの検討に入った。今年度中に結論を出す見通しだ。

要件緩和には慎重論もある。全国民生委員児童委員連合会の事務局も担当する全国社会福祉協議会の平井庸元(つねゆき)民生部長は「地域の住民以外が民生委員になった場合、緊急時に対応ができなかったり、ほかの民生委員の負担が増えたりする懸念がある」と話す。

100年以上の歴史を持つ民生委員制度。担い手不足という課題にどう対処していけばいいのか。平井部長は「より多くの人に改めて民生委員の役割や活動を知ってもらい、一緒に課題を考えてほしい」と話している。(本江希望)

一人一人が主体的に関わって

小松理佐子・日本福祉大副学長の話 福祉は国や行政がやるべきものだという考え方が主流になってきているが、国や行政の目が届かない地域の住民の悩みや課題にいち早く気付き、地域で対応することも重要だ。地域での支え合いの基盤が民生委員制度だ。

新型コロナウイルス禍でも、1人暮らしの高齢者に手紙を出すなど、つながりを作り続けた民生委員が各地にいる。

高齢者の孤立化などが大きな課題となるなか、民生委員はどうあるべきか。これからの時代に即した役割を十分議論し、確保策を検討する必要がある。

担い手不足の背景の一つに、自治会や町内会など自治組織の衰退もある。私たちの調査では、町内会やボランティアなどの活動が盛んな地域の民生委員は52・1%が委員継続の意思を示したが、盛んでない地域は29・8%だった。地域活動が盛んであるなら民生委員の仕事に関心を持つ人も多く、周囲も協力する土壌ができているからだろう。

私たち一人一人が主体的に地域に関わり、支え合うことで、民生委員の負担も減り、やりがいにもつながる。

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