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夕飯を食べにいくのはずっと縁のあるホーム 在りし日の父と母が入居していた場所 家族がいてもいなくても 久田恵(811)

産経ニュース / 2024年8月13日 9時0分

イラスト・ヨツモトユキ

毎日、私は近くの高齢者ホームに夕ご飯を食べにいく。行き慣れている道なので、とても便利だ。

1人暮らしだと、つい食事がいい加減になるけれど、1日に1度でも栄養士さんの考えたバランスのとれた食事をとれるのがいいな、と思っている。

このホームには在りし日の父と母が入居していた。親子でお世話になった懐かしい場所なのだ。いずれは私も入居する予定。親子2代にわたって利用する人が多いし、私にとっても昔から足を運んでいる場所である点が気に入っている。

思えば、母が脳梗塞で倒れて車椅子の生活になったとき、私はまだ30代で子育て中。しかも母子家庭の母親として奔走していた。

住んでいたのは神奈川の藤沢。介護と仕事と子育てでフル活動していたので、周囲の皆から「三重苦」などといわれていた。そんな大変な時期だった。

家事を終えた夕方に、同居していた父に後を頼んで東京に行き、取材をし、早朝に家に戻って息子を学校に送り出す、そんな綱渡りのような生活をしていた。

まだ民間の介護ホームは、珍しい時代だった。母の介護をしていた私は、このホームの成り立ちに関心を抱き、取材をしていたのだ。

母が入居した当初、私は仕事に追われていた。週に1度、深夜にホームに来て、早朝に帰る私に、創始者の「ユウコ先生」があきれて「あなた、家族みんなでこっちに引っ越してきたらいいじゃないの」と言ったのだった。それで、わが家は、藤沢から東京へと家族ごと引っ越してきたのだった。

そんな経緯があるもので、ホームに通いつつ、これぞわが人生を変えるような縁であったなあ、としみじみ思う私だ。(ノンフィクション作家 久田恵)

ひさだ・めぐみ

昭和22年、北海道室蘭市生まれ。平成2年、『フィリッピーナを愛した男たち』で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。介護、子育てなど経験に根ざしたルポに定評がある。著書に『ここが終の住処かもね』『主婦悦子さんの予期せぬ日々』など。

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