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厚生年金積立金の活用、導入は政治判断 財源など課題多く有識者も賛否分かれる

産経ニュース / 2024年12月24日 20時35分

厚生労働省が年金制度改革を巡って24日にまとめた報告書では、厚生年金の積立金を活用した基礎(国民)年金の給付水準の底上げの実施は「さらに検討を深めるべきだ」とされた。全国民が受け取る基礎年金の給付水準を底上げする一方、財源確保や厚生年金加入者以外に積立金を使うことへの反発といった課題もあり、これまでの社会保障審議会部会の議論でも有識者の賛否が分かれたためだ。政府は報告書を受けて、来年の通常国会に提出する関連法案に盛り込むか判断する。

給付水準が3割改善

厚生年金の積立金を基礎年金に振り分けて底上げを図るのは、基礎年金だけに加入する自営業者らが老後、貧困に陥るのを防ぐことが狙いだ。この方法で、年金を物価や賃金の伸びより抑制する「マクロ経済スライド」の基礎年金の抑制期間を早期終了させれば、令和18(2036)年度以降の基礎年金の給付水準が現在の見通しより約3割改善されるという。

2030年代には就職氷河期世代が高齢期に入る。この世代以降は初職での非正規・無業の割合が高く、資産形成が十分にできていない人も多い。基礎年金が老後生活のよりどころとなる可能性もあり、改善は急務だ。

厚労省は厚生年金受給者の99・9%も給付が手厚くなると説明。将来的には底上げの効果が大きくなり、厚生年金に40年間加入した会社員の夫と専業主婦の「モデル世帯」では、令和22年度から平均余命22年間で生涯受け取る年金の総額が最大451万円増える。

「給付額増やすべきだ」との反発も

一方で、マクロ経済スライドが終了するまでは振り向けに伴う水準低下の影響が大きく、6年度から平均余命の22年間受け取った場合、生涯で受け取る年金総額はモデル世帯で31万円減少。単身世帯の一部は76万円減少すると試算された。

また、基礎年金の半分は国庫(税金)で賄っており、年間1兆~2兆円程度の追加負担分の財源を確保することも課題だ。厚生年金加入者から「厚生年金に余裕があるなら、加入者への給付額を増やすべきだ」との反発も予想される。

来年は夏に参院選を控えている。政府は有権者の反応を考慮し、政治的判断で導入を見送る可能性もある。制度変更に関して、官邸内には「なるべく野党との争点は作るべきではない」(政府高官)と慎重論もある。

だが、日本総研研究員の藤本一輝氏は「現行のままでは、将来的に低年金で困窮する高齢者が多く生じる可能性が高い。厚労省としては、今回の制度変更は『やらなければならない』という側面が強いのではないか」と指摘。困窮した高齢者は生活保護に頼らざるを得なくなる可能性があるとし、「生活保護受給者が増えれば、結局は国民の税で負担することになる。制度変更はこうした状況を防ぐ意義がある」と語った。(大島悠亮)

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