日本赤軍事件 ゲリラ対策は非情な「市民戦争」であるべきだ 昭和52年「サンケイ抄」 プレイバック「昭和100年」
産経ニュース / 2024年9月15日 8時50分
「人質の救出が優先だ」「いや犯人逮捕が第一だ」で口論になり、九州の病院では殺人事件まで起きた。新聞の投書欄でもテレビの街頭録画でも「超法規的」措置をめぐって論議はふっとうしている。
▼ゲリラの要求を丸のみにした政府の態度に対する国民の反応はほとんど真っ二つに割れているが、二つの点で国民感情は恐らく一致するだろう。一つは、だれもが腹立たしさ、割り切れなさ、無念さをかみしめていること。二つは、「どこかでこの悪循環を断たねばならぬ」と痛感していること。
▼以上の仮定が正しく、この二点を解決することが必要だとすれば、われわれ日本人はどうしても体質改善を図らねばならぬ。「水と安全はタダ」ではなく「自由と平和は高価」なものであることを、感情やムードとしてでなく、論理や信念の体系としてわきまえねばならぬ。それも、性根をすえて、だ。
▼たとえばいま「政府は甘い」と批判する人たちは、もしゲリラの要求を拒否したことによって流血の事態が生じた時、てのひらを返して逆批判の側に回ることはないだろうか。感情的な結果論だけでものをいういい方がつづく限り、政府も「超法規的」という名の〝安全パイ〟を切りつづける。大臣の辞任でお茶を濁しつづける。
▼こうした無念さとエスカレートする悪循環を断ちきるには、与党も野党もない。政府も国民もない。市民全体が「自由を守るためには自己犠牲も辞さぬ」という市民的決意を、冷静な論理と常識としてゲリラにつきつけること。それを非情というなら、ゲリラ対策は非情な、〝市民戦争〟であるべきだろう。
▼日本人の体質改善とは、「自由には時として犠牲が伴う」ことを飛行機の乗客とその家族が知っておくことだ。マスコミも野党も一般国民も知っておくことだ。それを、国民〝感情〟ではなく、国民〝論理〟としてゲリラへの武器にする。それは世界に対する日本の義務でもあるだろう。
(昭和52年10月4日)
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