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「着るだけ」で健康に近づく 「未来の服」づくりに挑戦 山本化学工業社長 山本富造氏 万博未来考 第3部 番外編

産経ニュース / 2024年11月22日 7時0分

2025年大阪・関西万博は、健康や、よりよく生きる「ウェルビーイング」が出展の柱の一つだ。山本化学工業はウエットスーツや水着の素材メーカーと思われているかもしれないが、平成22年から医療機器を開発している。直に肌に触れる素材から健康を考えていくスタイルを万博でアピールしたい。

その一環で、電気を使わない医療機器としてのボディメンテナンスウエアを開発した。着用後、遠赤外線の力で血流量が改善するほか、疲労回復や筋肉の痛みを和らげる効果が期待できる。ラバー素材でも通気性を確保し、夏は涼しく、冬は暖かい。季節を問わず快適に着ていただける。

健康維持には、体を動かしたり病院に通ったりする必要があるというのが、これまでの常識だった。しかし「着るだけ」という手軽さによって、健康への新たな向き合い方を提示できると考えている。

万博ではこのウエアの素材をベースに、大阪府内で介護服や帽子、靴などを製造しているアパレル企業4社とタッグを組んで「未来の服」づくりにチャレンジしている。

来年9月の万博会場での展示に向けて開発しているのは、着脱しやすく介護服への転用も視野に入れるサイバースーツのほか、磁力で空中に浮く靴やジェンダーフリーの着物。各社が持ち寄ったアイデアで新たなものづくりができていることにわくわくしている。

「ラバー素材×アパレル」の目新しさが注目され、現在はルイ・ヴィトンやバレンシアガといった高級ブランドにも素材を提供している。従来のファッションは(着心地が悪かったり気温に適していなかったりしても)デザイン性や見た目が重視され「ファッションを楽しむには我慢が必要」ともいわれてきた。

しかし、これからの時代は、本当の意味でのファンクション(機能性)を追求したアパレルが求められるのではないか。肌に触れるものは、やはり快適であればあるほどいい。その上、健康に寄与する付加価値を帯びた服ができれば、消費者の生活はがらりと変わるだろう。「素材屋」にとっても、新たな市場にアプローチできる可能性を秘めている。

万博には国内外から、ものづくりに携わる人も訪れる。われわれの展示がひらめきやアイデアを与えられるよう、そして大阪のアパレルを含むものづくりの活況につなげられるように全力で取り組みたい。(聞き手 石橋明日佳)

やまもと・とみぞう 近畿大商経学部(現・経営学部)卒。在学中に米フロリダ州立国際大に留学し、多国籍企業論を学ぶ。昭和56年に山本化学工業入社、59年に社長就任。同社はトライアスロンやダイビングのウエットスーツ素材で世界トップシェア。大阪市出身。65歳。

=おわり

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