1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. カルチャー

「訳あり不動産」売買 骨肉の争い、空き家引き受けます 近ごろ都に流行るもの

産経ニュース / 2024年9月14日 13時0分

「訳あり不動産」の買い取り、再販を推進するネクスウィルの丸岡智幸社長。事例や対応をまとめた本も出版した=東京都港区(重松明子撮影)

売りたいのに売れない。そうした「訳あり不動産」に特化した売買が活発化している。権利関係が複雑な物件でも個別の持ち分を買い取り、法務関係を整理しながら残る持ち主と交渉を進め、再販できる状態にして市場に出す。売れないワケは実にさまざまで、兄弟の骨肉の争い、ペアローンを組んだ夫婦の離婚による愛憎、名義が数代前の先祖のままだった…など、感情も絡んでややこしい。今年4月に不動産の相続登記が義務化され、長年封印されていた問題に直面する当事者も目立つ。ケーススタディーをまとめた本も出版された。

国土の24%が所有者不明

共有不動産をめぐるトラブルが増えている。東京なら世田谷区あたりに多いという。

「昭和に買ったときよりも地価が高騰し、親が亡くなった際に相続できるものが不動産しかないというケース。長男が引き続き住むけれど、権利は兄弟均等に分けられ、親族間で借地となる。一旦そこで納まっても、『ただで土地を貸すのはおかしい。買い取って』と弟の奥さんなどが出てくる。お金ないよ、それに親の介護も面倒も見なかったじゃないかと、争うケースを何度も見ました」

訳ありに特化した不動産売買「ワケガイ」を展開するネクスウィルの丸岡智幸社長(41)が語った。

不動産投資会社の同僚5人で5年前に創業。空き家などが社会問題になっていることに目を付け、他社が手をつけたがらない訳あり不動産に特化した事業を展開し、直近で年間500件超の買い取り実績、今年度の売り上げは前年度比倍増の30億円を見込んでいる。

同社推計によると、複数所有者がいる共有持ち分不動産の潜在的市場規模は9・4兆円。今は問題なくても、将来的にトラブルの種になる可能性がある。

「権利者に売りたくない人が一人でもいると売れないのが現状。私たちは、弁護士による法的な手続き、ネックとなっている方との交渉も含めて不動産を買い取りますので、価格は相場の3~7割程度に下がります。それでも売りたいという方が非常に多く、月間約500件の相談を受けている。子や孫の代で問題がさらに複雑化する前に古い家を売って、便利なマンションに住み替える高齢者も目立っています」

地方で大問題になっている訳あり物件が空き家だが、そこにも商機がある。

「お金を払うから引き取って」という所有者から100万円ほどもらって現況のまま引き受けた物件も多数。「空き家が欲しいという方がいるからです。数万円で購入し、自分で安くリフォームして貸し出して利益を得たいと。安い空き家を投資物件と見る人たちが現れている」と丸岡社長。新型コロナウイルス禍のリモート勤務で、田舎暮らしが身近になったことも追い風のようだ。

同社は6月、岩手県紫波町と提携し、空き家対策を進めることにもなった。所有者不明などで公的な空き家バンクに載せられない物件も、自社で運営する個人間の不動産売買プラットフォーム「空き家のURI・KAI」で公開し、買い手との接点を広げている。

所有者不明の土地は国土の24%にのぼり(令和4年度国土交通省調べ)4月には、任意だった相続登記が義務化された。丸岡社長はこの機会に、トラブルと解決事例をまとめた著書「拝啓 売りたいのに家が売れません」(自由国民社)を発行。再建築不可物件や孤独死による事故物件なども取り上げている。

実際に訳あり不動産を売却した男性会社員(29)にも話を聞いた。

祖父所有の東京郊外の一戸建てを相続。父は早世しており、持ち分は自分と兄が45%ずつ。残り10%を所有する祖母に売却を持ちかけるも断固拒否され、やむなく兄弟の持ち分のみを売った3カ月後、祖母分もすべて買い取りが完了したと担当者から連絡を受けた。

「あのクセの強い祖母から合意を取り付ける交渉力に驚いた。もとから折り合いの悪い身内同士で、話を進めることは難しかった」とすっきりした様子だ。

日本の持ち家率は6割。そして、年間157万人超(令和5年)が亡くなる多死社会…ひとごとではない。(重松明子)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください