大阪市での「男性専用車両」イベント中止受け 主催団体代表が訴え 「いつか開催したい」
産経ニュース / 2024年11月15日 17時50分
17日に予定していた大阪市内の路面電車を貸し切り「男性専用車両」として走らせるイベントが中止されたことを受け、イベントを主催するNPO法人「日本弱者男性センター」の藤倉たける代表が産経新聞のインタビューに応じた。同センターの公式X(旧ツイッター)などに、車両の貸し出しを断った運行会社を批判するコメントも複数届いているといい、「運行会社様、イベントを楽しみにしていた皆さまに申し訳ない」と改めて謝罪。運行会社側に理解を求める活動を続け、「いつか大阪市内でも運行イベントを開催したい」と意欲を示した。
貸し出し中止の理由聞けず
大阪でのイベントは、運行会社の課長級社員から条件付きで車両貸し出しの了解を得て進めていたというが、5日に課長の上司の判断により貸し出しできないとの連絡を受けた。「貸し出せなくなった経緯や運行会社側にクレームが届いていたかなどの詳細は教えてもらえなかった」という。
性的少数者(LGBTなど)の権利主張が盛り上がる中、ネット上では「女性専用車両があるのだから男性専用車両も認めるべき」「専用車両は新たな分断を生む」といった賛否の声が渦巻く。藤倉氏は「われわれがイベント開催を発表したことで会社側にクレームが来たかもしれないと思うと、大変に申し訳ないと思っている」と強調。同センターのXなどで「勝手な予測で運行会社に対し非難や抗議をしないように」と呼びかけていると説明した。
大阪開催に反対の声多く
同センターは、男性も電車内で異性からの性被害や痴漢の冤罪被害などの不安を抱いていることを知ってもらう目的で、父の日がある6月と国際男性デーがある11月の年2回、東京都内の路面電車を借り切って「男性専用車両」を走らせるイベントを開催。今月17日の大阪市でのイベントは、東京都以外では初めての開催となるはずだった。すでに7人から参加の申し込みがあったという。
「東京都内では男性専用車両のイベントを過去4回開催し、色々なメディアでも紹介されて、かなり認知が広がっていると自意識過剰だった部分もある」と藤倉氏は反省する。
男性専用車両を批判する意見は、都内での初回イベントの際も多数届いたが、「今回の大阪での開催に際しては、特に反対の声が多く、女性への安全面の担保を求める意見も多いと感じた」と藤倉氏。その理由について、関西では過去に列車内でのトラブルから女性が男性に暴行される性犯罪事件が散見されていることから「関西ではとりわけ、男性専用車両に対する嫌悪感が強いのかもしれない」と推測する。
大阪以外の路面電車で検討も
ジェンダー論の専門家からは、男性の痴漢は同性からが多いことなどを理由に、男性専用車両の必要性を疑問視する意見もある(後述)。藤倉氏は「確かに男性専用車両に対し、『あっても乗らない』『臭そう』といった否定的な意見もある。ただ、痴漢冤罪の被害は明らかに男性の方が多い。色々な観点から考えて、選択肢のひとつとして必要だ」と訴える。
また、今後のイベントについては、「都電で続けるか、札幌や広島、岡山など大阪以外の路面電車が走る地域で開催するか検討している」と説明する。
ただ、「男性専用車両の常設に向けて、東京に次ぐ都市である大阪は外せない地域」と強調。「今後も運行会社側と話し合いを続け、理解を得た上で、いつか大阪でイベントを開催したい」と前向きに語った。
「誤乗した女性の危険もある」
東京大大学院の瀬地山角教授(ジェンダー論)の話
電車内での異性からの性被害や痴漢の冤罪被害の防止目的に男性専用車両の必要性を訴えるのならば、まずは男性の痴漢被害の認知件数や冤罪のデータを示すべきだ。恐らく、女性の痴漢被害に比べて男性の痴漢被害はものすごく少ないだろう。また、男性の痴漢被害は男性(同性)からも多いはずで、男性専用車両はその解決策にはならない。
男性専用車両を設けた場合、それに誤乗してしまった女性が被害を受ける危険性もあり、女性の痴漢被害の深刻さを理解しているとは思えない。また、過密なダイヤで列車を運行している鉄道会社としては、男性専用車両の導入は列車の遅延を招くという観点からも、是認しないと思われる。
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