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所得代替率は好調も基礎年金部分には課題、制度改正が急務 厚労省の財政検証

産経ニュース / 2024年7月3日 16時12分

厚生労働省は3日、公的年金の長期見通しを示す財政検証結果を公表した。今回の財政検証では年金水準がおおむね改善傾向にあることが示された。ただ、実質経済成長率がマイナス0・1%の過去30年投影ケースの場合、平均余命の伸びと被保険者数の減少に応じて年金額の改定を抑制する「マクロ経済スライド」は、厚生年金の給付額を加入期間や過去の報酬などで計算する報酬比例部分の適用が2年後に終了する。これに対し基礎年金部分はさらに31年間も適用が継続する見通し。

基礎年金の支給額は中長期的に減額が続き、低賃金で報酬比例部分が少ない人や、基礎年金のみに頼る5人未満の個人事業所の従業員やフリーランスなどの人々には大きな痛手となる。年金制度の維持に国民の理解を得るため、基礎年金を立て直す制度改正が急務だ。

過去30年投影ケースでは、マクロ経済スライドに伴う報酬比例部分への給付水準の調整は2026年度に終了する。一方で、基礎年金部分は57年度まで適用される。このため物価変動率で割り戻した実質額でみると、今年度は13万4千円だった夫婦の基礎年金額が、57年度まで減り続け約2割減の10万7千円となる。

こうした事態を回避するための対策が、マクロ経済スライドの調整期間の一致や、被用者保険のさらなる適用拡大といった制度改正だ。厚労省は今回の財政検証で、「オプション試算」としてこれらの影響も検証した。

基礎年金部分と報酬比例部分のマクロ経済スライドの調整期間を一致させた場合、過去30年投影ケースでは36年度にそろって終了する。所得代替率は現行制度での試算に比べ報酬比例部分が2%下がるが、基礎年金分は7・7ポイント上がるため全体では5・8ポイント増となる。

また、被用者保険の適用を拡大した場合の影響も試算し、200万人拡大すれば所得代替率は全体で1・4ポイント増え、860万人拡大では5・9ポイントのプラスになるという。

このほか一般的な就労期間の伸びに合わせ、厚労省は基礎年金の保険料納付期間を現行の40年から45年に延長した場合の影響も試算し、過去30年投影ケースで代替率が全体で6・9%増加する。ただ、基礎年金の給付は半分が国庫負担で賄われ、納付期間を延長すれば国庫負担が増える。財源として将来的な増税の必要性が指摘される可能性もあり、今回の改正では導入を見送る方向だ。

年金問題に詳しい日本総研の高橋俊之特任研究員は「過去30年投影ケースの試算では、延々と基礎年金だけの調整が続く。来年の改正で調整期間を一致させないと間に合わず、早急な制度改正が必要だ」と述べた。(大島悠亮)

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