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栄光翌日から苦しんだ3年 柔道女子78キロ超級の素根輝、「三倍努力」で最重量級連覇へ

産経ニュース / 2024年8月2日 19時3分

試練の3年を乗り越えてたどり着いた舞台だ。柔道女子78キロ超級の素根輝(あきら)(24)の座右の銘は、史上最強の柔道家と呼ばれた木村政彦さんの残した「三倍努力」。だが、けがを繰り返し、手術もして満足に練習できない時期が続いた。国際大会で表彰台に上れず「納得がいかない」と唇をかんだ悔しさも胸に、女子最重量級初となる五輪連覇に挑んだ。

3年前の東京五輪で78キロ超級を制し、頂点に立った翌日のことだった。混合団体に臨んだ素根は、初代王者をフランスに奪われた決勝で唯一勝利を上げたが、左膝を負傷。さらに令和4年1月、母校・南筑高(福岡)で練習相手を務める後輩の男子選手を投げた際に、引っかかった膝が悲鳴を上げた。

「誰のせいとかじゃないから」。顔面蒼白(そうはく)となった後輩にそう、声をかけた。

3月に手術。「手術前よりいい状況になる。プラスだよね」。周囲にはそう話したが、心と体を徹底的に追い込み、「これだけやったけん」と自信を保つ素根にとって、そう思えるほどの練習ができない状況が続いた。

南筑高で指導した松尾浩一(こういち)さん(51)は「重量級は練習量が少ないのが普通だが、輝は違う。夏場は熱中症で救急車を呼ぶ一歩手前まで立ち稽古をしていた」と振り返る。

「努力しなくても勝てるでしょとか絶対に思わない。それが先輩」。1年下の後輩で高校時代の素根の練習相手だったディビリア・ギルバートさん(23)も話す。2人は高校時代、乱取り稽古を繰り返した。素根につかまれたディビリアさんの柔道着の袖は指先が隠れるほど伸び切った。柔道着の摩擦で腕はやけどし、毛が抜け落ちたという。

手術からの復帰後は苦難が続いた。4年12月には、4年弱続いていた連勝記録がストップ。世界選手権の王者となり、パリ五輪代表の座を得たが、今年3月のグランドスラムでは主要国際大会で初めて表彰台を逃した。4月のアジア選手権は負傷で棄権せざるをえなかった。

そんなまな弟子を見守る松尾さんは、逆境になれば地力を発揮する高校時代の素根の姿が忘れられないでいる。

高2で臨んだ全国大会決勝。勝者がそのまま次の対戦相手と戦う方式で、南筑高は4人連続で負けた。相手はパリ五輪52キロ級代表の阿部詩(うた)(24)。「何人相手が残っていても私が勝ってきます」と素根は宣言し、阿部を皮切りに史上初の決勝5人抜きで優勝した。「けがで少し臆病になっている気もするけれど、大丈夫。本番にピークを持ってくる」。松尾さんは期待を込めて、素根にエールを送った。(五十嵐一)

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