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成功したとは思っておりません 「安くしてぇ~」と同じ甘ったるい声で始球式は大暴投 話の肖像画 夢グループ創業者・石田重廣<1>

産経ニュース / 2024年11月1日 10時0分

(酒巻俊介撮影)

《妙齢の女性に甘えた声で「社長~、安くしてぇ~」とお願いされ、「じゃあ、このデーブイデー(DVD)はこのお値段で」と福島訛(なまり)で応じる。ベタな掛け合いの通販CMで人気の夢グループ創業者は、地球儀の訪問販売や空き瓶回収から始まり、年商約200億円の企業体を一代で築いた人物でもある》

今年5月、楽天モバイルパーク宮城で初めて始球式をしたんです。自信に満ちあふれていたんですよ。元巨人の角盈男さんから「社長、練習しないとだめだよ」ってアドバイスされ、地方のステージでは空き時間に歌い手さんとキャッチボールをしてきましたから。当日はこどもの日でお客さまは満員。僕は上がり性じゃないもんですから、あの雰囲気を十分に堪能しようと思ったの。

球場のマウンドは約50年ぶりでした。僕と(CMで共演する夢グループ所属の歌手)保科有里さんがグラウンドに出たら、わーっと割れんばかりの声援です。でもちょっと物足りない。僕の中では甲子園の決勝戦で投げるイメージだったんで、「社長!」「社長!」って言ってくれるのはうれしかったんですが、「石田!」ならわかるけど、甲子園で「社長!」はないだろうって。

で、始球式は1球だけで終わっちゃう。すぐ投げちゃうともったいない。マウンドにはゆっくり向かいました。マイクがあったら感謝の気持ちをお客さまにお伝えしたかったんですけど、マウンドにはない。で、僕は何をしたか。グラブにボールをバンバン投げるのを3、4回。でもまだもったいない。そこでボールを上にポーンっと投げて自分で捕るのを1、2回やったかな。あまりやったら顰蹙(ひんしゅく)を買うからね。その後は内野手に「試合、頑張ってください」とあいさつ、続いて外野手にも。

で、いよいよ投球です。ゆっくり大きく足を上げればお客さまは期待するだろうと動作に入った。ここまで完璧。が、足を上げた瞬間、後ろから「社長~、頑張ってぇ~」って保科さんが…。「安くしてぇ~」と同じ甘ったるい声で、一気に頭から甲子園が吹っ飛んだ。こうして人生初の始球式は大暴投に終わったのでございます。

《高校野球の名門・東北高校で投手として活躍し、プロを目指したが断念、その後は大学受験も断念した。19歳で上京して起業、中国では自らリヤカーを引いて商品を運んだことも。その後は通販ビジネス、芸能事務所と事業を拡大。保科さんとのやりとりはTikTokで若い世代に人気となり、少年漫画誌の連載でキャラクターとして登場。9日には保科さんと幕張メッセで開かれるフェス「氣志團万博」に出演する》

20年ほど前、通販から逃げたくなったんです。年間約200万件も購入いただいているのですが、かかってくる電話はクレームばかりでお礼は1本もない。うちの商品はそんなに喜んでもらえないのか、と自信をなくしかけました。芸能事務所を始めたのはそのころで、コンサートに行くたびに「この場を借りて謝らせてください」と壇上からあいさつしたのです。各所でお客さまから直接、「満足しているよ」と声をかけられ、続ける勇気をいただきました。

僕は成功したとは思っていないんですよ。高校野球では地方予選から甲子園の決勝戦へと相手はどんどん強くなり、ハードルがどんどん高くなっていくでしょ。夢や目標に向かっていくと、もっともっと険しい道に入っていくわけですよね。でもいまさらハードルを低くすることは難しい。だから今は「これから一体どうなるの?」っていう怖さしかないんですよ。(聞き手 大野正利)

石田重廣

いしだ・しげひろ 昭和33年、福島市生まれ。福島大学付属小・中学校を卒業後、東北高校野球部で甲子園を目指すも断念。19歳で上京後、広告会社を起業。30代で通販会社「ユーコー」を設立し、中国や香港からの輸入品の販売を始める。平成15年には芸能事務所「あずさ2号」を設立。その後、「夢グループ」として通販と芸能事務所をメインに事業を展開している。

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