突然訪問の業者を屋根に登らせてはいけません 悪質な「点検商法」警戒を 100歳時代の歩き方
産経ニュース / 2024年10月13日 9時0分
リフォーム業者を装い、住宅の屋根や床下に関する不要な工事契約を結んで修理費を不正に得る「点検商法」が、全国で広がりを見せており、捜査当局や国民生活センターなどが警戒を強めている。高齢者が標的にされる傾向が強く、被害や相談件数も年々増加している。家の様子や貯蓄の状況などを把握されて別の犯罪被害につながる危険性もあり、より注意が必要だ。
「お宅の屋根の一部が風で今にも飛びそうになっているのが見えました。もしよかったら屋根の点検をしますけど上がらせてもらえますか」。これは、警視庁に摘発された点検商法の業者らが、実際に神奈川県内の戸建て住宅の住人に持ちかけていたセールストークだ。
業者はこの後、住人の許可を得て住宅の屋根に上がり、見えない所で破損のない屋根の一部を破壊した。その上で、くぎが抜けている状況を動画撮影して住人に見せ、「板金が外れて板が水にぬれている」「例えれば豆腐にくぎが刺さっている状態だ」などともっともらしい言葉を重ねて約52万円の工事契約を結ばせた。
捜査関係者は「住んでいる家の屋根がどうなっているか、住人にも見えない所を突く巧妙な手口だ」と話す。
男らは首都圏で同様の犯行を繰り返していた。住人が高齢者と見るや、態度や手段、請求額をエスカレートさせた。
東京都葛飾区の60代男性が住む家に現れた男らは屋根に上って、工事の必要もない箇所をめくって損壊した。「台風で飛んだら大ごとですよ」などと男性に畳みかけ、工事代金の名目で200万円以上にものぼる高額な工事契約を結ばせていた。
同区に住む認知症の90代男性に対しては、複数回訪問した後、判断能力の低下に付け込んで工事代金165万円を入金させた。さらに同じ日、484万円の別の工事契約を結ばせようとしたが、男性の家族が契約内容を知って撤回することができたため、未遂に終わった。
男らは令和4~5年、計約600件の工事契約を結び、計約8億5千万円もの利益を得ていた。
点検商法による同様の悪質行為は、この業者だけにとどまらない。7月には主に床下の点検・改修をうたう別の業者が警視庁に摘発されている。この業者は社名を変えながら、神奈川県や埼玉県に展開していた。警察当局は匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)が関与しているとみて、解明を進めている。
点検商法で訪れた業者らが把握した家の構造や資産状況などが、強盗や特殊詐欺といった別の犯罪に悪用される可能性もある。警察当局は犯罪行為が広がらないよう警戒を強めている。
不安煽り「お得感」アピール
点検商法の悪質業者らは言葉巧みに不安をあおり、断りにくい状況を演出する。どうすれば被害を防げるのか。
国民生活センターが点検商法で寄せられた相談を分析したところ、業者の「トーク」には共通した特徴があった。
まず、「近所で工事をするのであいさつに来ました」などと、その場で断りにくい文言を使って玄関を開けさせ、「このままでは雨漏りする」「瓦が飛んだら近所にも迷惑だ」などと不安をあおる。
続いて「今すぐ契約すれば安くなる」「保険を使って修理できる」などと「お得感」を強調。一度契約してしまえば「外壁も傷んでいる」「シロアリがいる」などと追加の工事を要求するケースが多い。
センターの担当者は「点検をさせてしまえば断りにくくなる。『無料点検』といわれてもさせないようにすることが第一だ」と話し、突然訪問してきた業者には対応しないといった自衛の重要性を指摘する。警視庁も注意喚起のチラシや防犯ステッカーを作成した。
また、家族や地域など周囲の人の目も大切だとされる。センターの担当者は「家族や近所の人らが、高齢者が住む家に不審な人間が出入りしていたり、困っていたりする様子に気付いたら、声をかけ、消費生活センターなどに相談してほしい」と呼びかけている。(外崎晃彦)
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