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「年金が増えた実感ない」物価高で実質的に目減り 生活の自衛策が必要 これから 100歳時代の歩き方

産経ニュース / 2024年8月18日 9時0分

続く物価上昇で、年金生活者の暮らしが厳しくなっている。年金は引き上げられたが、物価や賃金の伸びより低く抑えられ、実質「目減り」しているためだ。目減りは今後も続くとみられ、生活の自衛策が必要だ。

「年金が増えた実感はありません」

8月の猛暑の中、東京都文京区の公園を散歩していた無職女性(84)はこう話す。物価が上がっていることは実感している。自動販売機でいつも買っていたペットボトルの飲料は150円になった。「昔は120円だったのに」とこぼす。

年金の支給額は物価と賃金の変動に応じ、毎年度改定される。今年4月、厚生労働省は2.7%引き上げた。引き上げは2年連続で、伸び率はバブル崩壊後の平成5年度以来、最も高い。

68歳以下では、会社員らが対象の厚生年金は、平均的な給与で40年間働いた夫と専業主婦のモデル世帯で月23万483円(前年度比6001円増)、自営業者らが受け取る国民年金は満額で月6万8千円(同1750円増)となった。

ただ、将来の給付水準を確保するため、年金の伸びは物価や賃金の伸びより低く抑えられ、実質的には目減りしている。

抑える仕組みは「マクロ経済スライド」と呼ばれる。今回は昨年の物価上昇率(3.2%)が過去3年間の名目賃金の上昇率(3.1%)を上回ったため、名目賃金上昇率を基準に改定。0.4%低く抑える調整が行われた。

平均余命の延びと被保険者数の減少に応じて調整されるため、今後の物価上昇と相まって、さらに目減りは大きくなっていくとみられる。ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫上席研究員は「今の高齢者には大変だが、将来世代を考えて、痛みを分かち合う仕組みだ」と説明する。

年金が抑えられる一方、物価上昇以降の家庭の支出は増えている。家計調査年報(令和5年)によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の支出は28万2497円にのぼり、物価上昇が本格化した4年に比べて5%アップした。実収入がわずかに減少しているため、不足分は7割増の3万7916円にのぼる。

年金財政の見通しも厳しい。厚労省が7月に発表した財政検証では、経済成長が過去30年と同程度で続いた場合、標準的なケースで現役世代の収入と比べた年金額の給付水準は、6年度の61.2%から33年後の39年度に50.4%となり、約2割低下する見通しだ。

中嶋氏は「将来の世代の負担を減らし、給付水準を上げるためにも、時代の変化に合わせて制度を見直していかなくてはいけない」と述べている。(織田淳嗣)

受給繰り下げや就労期間の延長も

生活防衛策としては、家計の見直しに加え、年金受給の繰り下げや就労期間の延長が有効とされる。

年金は本来の受給開始である65歳から1カ月繰り下げるごとに0.7%ずつ増額率が加算され、1年で8.4%割り増しされる。70歳まで5年繰り下げれば42%。令和4年度からは75歳まで繰り下げられるようになり、最大で84%増やすことが可能になった。

中嶋氏は「『妻は私より長生きするだろうから自分より繰り下げよう』など、作戦を立てることができる」と説明する。3年繰り下げでも25%強の割り増しとなり、今回の財政検証で示されたように将来の年金の給付水準が約2割減ったとしても、穴埋めできる計算だ。

繰り下げ中の収入を確保したり、年金の不足分をカバーしたりするには、高齢になっても働く必要がある。

高齢者の就労意欲を低減させると指摘されているのが、働く高齢者の年金を減額する「在職老齢年金」だ。ただ、在職老齢年金は一定以上の収入がある人が対象で、見直しの検討も議論されている。「対象は限定的だという周知が十分でなく、『働き損』と思われている。フルタイムでなくても就労し、貯蓄の取り崩しと組み合わせる対処法も考えるべきだ」(中嶋氏)という。

大和総研の佐川あぐり研究員は「個人が自助で備えるだけでなく、より長く働けるような環境作りを国の制度として進める必要がある。iDeCo(イデコ)など私的年金も使い勝手は良くなっており、活用していくことも重要ではないか」と話す。

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