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100円ラーメンで地元・八王子に恩返し めだかやドットコム・青木崇浩社長(48) TOKYOまち・ひと物語

産経ニュース / 2025年1月14日 20時29分

この地で愛され続ける100円の「醤油ラーメン」。ライスは別料金=令和6年12月、東京都八王子市の複合施設「桑都テラス」

物価高もあってラーメン1杯1000円も当たり前の時代、東京・八王子の「100圓ラーメン」では、その名の通り100円でラーメンを楽しめる。店を運営する青木崇浩さん(48)は、メダカ販売事業を手掛ける「めだかやドットコム」の社長で、障害者就労支援にも携わる。かつて大病を患い、人生のどん底も経験した苦労人が多くの人とのつながり、『百縁』を結ぼうと、地元の名物メニューを蘇らせた。

メダカに魅せられ

小学5年のころ、理科の授業で触れたのが、メダカとの出合いだった。中学ではクラスで飼っていたメダカの世話をするうちに、「一匹だけ色が違うことに気付いて、そのメダカをかわいがった」。

家でもメダカを飼育し、ますます魅せられていった。「小ささや色合いがかわいらしくて、僕自身、メダカが嫌いという人に会ったことがない」と目を細める。

大病から逆襲

漠然と「ビッグになりたい」と夢を掲げていた青木さんは、世界で活躍する仕事にも興味があり、大学では経営学の道に進み、米国留学も1年間経験した。だが留学中に生じた頭部の違和感が、青木さんの人生を大きく狂わせていく。

帰国後、脳の難病であることが判明。病の進行は止まらず、手術に踏み切った。順風満帆に思えた人生が一瞬で崩れたことで鬱病も併発した。「周りは活躍していて、自分だけが取り残されている。その悔しさと苦しさは半端じゃなかった」

父、克彦さんの支援を受けて立ち直ると、青木さんはメダカで再起を図る。平成16年にメダカ総合情報サイト「めだかやドットコム」を開設し、メダカに関する情報発信を積極的に行ったほか、メダカの販売事業も手掛けるようになった。22年には突然変異などで生まれたさまざまな色や形をした「改良メダカ」の育成方法をまとめた専門書を出版。メダカの第一人者としての地位を確立していった。

そんなある日、近くの児童養護施設でメダカの授業をする機会があった。何度か足を運ぶうちに、障害を抱える子供たちに喜んでもらえるようになると、「何もできない自分を欲してくれる人がいる。自分が劇的に変われたと思うし、彼らのサポートをしていきたいと思った」。メダカ事業と並行して福祉の知識を一から学び、平成28年に障害者就労を支援する「株式会社あやめ会」を設立。八王子市内で多方面に事業を展開するようになった。

「八王子の名物」復活

青木さんが次に目をつけたのは、かつてJR西八王子駅近くにあった「満福亭」の名物メニュー、100円ラーメンの「復活」だった。青木さんも足しげく通ったといい、「お小遣いで食べられるので、駄菓子屋に近い感覚。地域住民との交流もあって、僕らの聖地みたいな場所だった」と回顧する。

同市の複合施設、桑都テラスに青木さんが「100圓ラーメン」を開店したのは2年前。破格で提供するため1日の営業を3時間、提供は100杯に限定するなどコストを抑えた。麺は自身が運営する日野市の「メダカフェ」で自作しており、来月からはスーパーなどでの販売も見据えて、八王子市内に自家製麺所を構えるという。

また「誰が食べても『ラーメンってこうだよな』っていう懐かしさを感じられるように」と、万人受けする味を追求した。原価を抑えつつも人気が長続きするような、経営学を修めた青木さんならではの工夫が随所に感じられた。

「百縁」を大切に

店の横には「百円は百縁なり」と記された看板が立てられている。満福亭では年配の人におごってもらったり、他の子供たちと出会ったりした。父や障害を持つ子供たちとの「縁」にも感謝し、「(障害や病気で)今、苦しんでいる子供たちにとって、少しでも希望になれるように」との思いを込めた。(宮崎秀太)

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