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新聞の長期購読者割引 前払いなら値引きしても採算が取れるんです 渡辺恒雄さん(11) アーカイブ「活字文化考」

産経ニュース / 2024年12月30日 13時0分

読売新聞の渡辺恒雄社長=平成7年9月21日

――新聞の長期読者への割引サービスを考える必要があると思うんですが。アメリカにはそういうサービスがありますね。

渡辺 何年か前の新聞大会で僕はパネリストとして、長期購読者に対する値引きを考えたらどうだと発言した。一番先に新聞界で言ったのは僕です。

ところが、実際にやろうとすると、非常に難しい。値引きをした後、購読をやめたり転居したりされると、採算が取れないので、値引きしようと思ったら前金で、もらわなきゃだめなんだ。前払いなら値引きしても採算が取れるんですよ。

しかし、一年分を前金でもらおうとすると、四万円を超すんです。「来月から読売新聞は一年の定期購読者については値引きいたします。その代わり全額前払いでお支払い願います」という社告を出したら、一千万部のうち、応じてくるのは、僕は一%もないと思うんです。

――前払い…、難しいですね。

渡辺 アメリカでは「タイム」「ニューズウィーク」「USニュース&ワールドリポート」などの雑誌が、長期購読者にものすごい値引きをするんですよ。かりに一冊一ドルだとすると、一年契約だと八十セントぐらい、二年契約だと七十セントぐらい、三年契約だと六十セントぐらいになる。僕は三年契約でこの三誌を取ってましたよ。配達は郵送です。

日本は雑誌を郵送するときには封筒に入れて何センチか切って中身が見えるようにしろというおきてがある。ところが、ワシントンで僕の自宅に郵送されてくるのは、僕の住所のラベルを「タイム」や「ニューズウィーク」の表紙にペタンと張って、なんにも包装していない。こん包コストが全く要らないんだな。

アメリカは全国紙が発達しないで、地方紙ばかりなんだ。地方紙でもレベルの高い「ニューヨーク・タイムズ」や「ワシントン・ポスト」はある。しかし、おおむね地方紙は相当にレベルが低い。一面が裸の女とか、人間の惨殺死体とか、そういうものを一面にどかーんとやる。

だから、アメリカのインテリは、高度な情報を得るために「タイム」「ニューズウィーク」を読むんです。したがって五百万部というような単位で出ている。その単位で出る雑誌が、長期契約で完全受注生産できるから値引きができるんですね。ところが、日本では郵便物の配達のおきてで封筒にいちいち入れなきゃならない。郵便料金、配達システムからも日本では不可能です。

――コスト軽減に限度があるということになる。

渡辺 なるんですよ。そこで「タイム」「ニューズウィーク」が大幅割引をできるのも、全部前金だからなんです。前金で取れれば、金利だけでも相当な額になるんですよ。一年計画、二年計画、三年計画で完全受注生産できますから、返品もない。日本の週刊誌は四割とか五割とか返品があるから、返品を見込んだ価格を設定しなきゃならんが、「タイム」「ニューズウィーク」は普及率がすごいし、長期購読者が多いから、値引きができる。

――新聞の場合は。

渡辺 新聞の長期購読者の値引きというのは合理的なように聞こえるが、実際にできますか。やれというなら来月から読売新聞がやってみせますよ。だけど、おそらく前金で四万円も銀行振込で送ってくれる人はまず一%もいない。 (文化部長 小林静雄)

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