品薄続きのオレンジジュース 広がるプレミアムな「生」搾りジュース機
産経ニュース / 2024年6月23日 9時0分
手軽にビタミンや糖分を補給できるオレンジジュース。丸ごとのオレンジを機械が搾って1杯ずつ提供する生ジュースが、静かなブームになっている。一方、濃縮果汁を使った値頃な市販品は品薄が続く。オレンジジュースにいったい何が起こっているのか。
今月中旬、東京都文京区内のスーパーを訪れた。紙パックジュースの棚を見ると、リンゴ、パイナップル、ブドウは、それぞれサイズもメーカーもさまざまな数種類がそろうのに、オレンジは、900ミリリットルと200ミリリットルが1種類ずつしか置かれていなかった。
品薄の原因は、原料となる濃縮オレンジ果汁の不足だ。飲料メーカーへの影響は深刻で、森永乳業の「サンキスト100%オレンジ」は、今月17日に社内の商品在庫がなくなったため、販売を休止した。それ以前に、雪印メグミルクの「ドールオレンジ100%」は昨年4月から、アサヒ飲料の「バヤリースオレンジ」は同12月末から、大型サイズの販売を休止。ヤクルト本社の「オレンジジュース」は今年4月から休売している。
大半を占めるブラジル産の輸入が激減
日本果汁協会の川村和彦専務理事によると、加工用オレンジを搾って作る濃縮オレンジ果汁は、ほぼ100%を輸入に頼っている。ところが近年、総輸入量の5~6割を占めるブラジルで、果樹の病害と天候不順が続き、収穫量が激減。令和3年の輸入量は前年の半分近くまで落ち込んだ。
追い打ちをかけたのが、急激な円安だ。5年の1リットル当たりの輸入価格は491円で、前年の323円から1・5倍に跳ね上がった。「総量が足りないうえに、価格が考えられないくらい上がったので、日本が買い負けるようになった」と川村さん。
国産でまかなおうとしても、オレンジの生産量は極めて少なく、代替品として期待されるミカンなど他のかんきつ類は、生食用のほうが高く売れるため、ごく一部しか加工に回らない。川村さんは「果汁不足は一朝一夕には回復しない」と声を落とした。
新鮮な果実をマシンで搾り、出来たてを
そんな中、注目を集めるのが、生の果実を搾って作る、出来たてのオレンジジュースだ。リーガロイヤルホテル東京(東京都新宿区)は4月から館内レストランに、生のオレンジを目の前で搾ってジュースにする最新鋭の機器(マシン)を導入した。ボタンを押すと、上部のかごから新鮮なオレンジが投入され、わずか15秒で爽やかな香りのフレッシュジュースが出来上がる。
朝食ビュッフェに取り入れたところ、「2杯、3杯と楽しむお客さまが多く、大変好評です」(佐藤幹一マネジャー)。ほどなく昼夜の食事利用者にも1杯500円で提供を始め、休日には200杯以上も出る人気メニューになった。
果肉の粒感のある鮮やかな黄色の果汁はとろりと濃厚。1滴の水も加えられていない。鼻腔を抜ける香りを感じながら飲み干すと、きりっと強い酸味と果物の甘みがのどを伝った。「これは食べるジュースです」と、佐藤さんは胸を張る。
このマシンを販売するミー・グループ・ジャパン(さいたま市)は、生搾りオレンジジュースの自動販売機を自社事業として全国に展開。参入から3年足らずで、駅前や商業施設などに400台以上を設置した。市販ジュースの品薄が続く中、じわじわと売り上げを伸ばしている。
生のオレンジは濃縮果汁とは違い、品種や産地が特定の地域に偏っているわけではないため、比較的安定した調達が可能なのだという。
「冷えたオレンジを搾った果汁そのまま、氷を使わないため、本来の濃厚で香り高い味わいを楽しめます。そのおいしさを一度体験して、リピーターになる人が増えています」(同社担当者)。同じオレンジジュースでも、搾りたての味わいは、より身近になりつつあるようだ。(田中万紀)
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