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「福祉施設への留学制度」NPO法人が展開 職場体験を通じて介護職の魅力伝える

産経ニュース / 2024年9月4日 21時8分

「きつい」「賃金が安そう」といったマイナスイメージがある介護現場で、若い人材の確保が難しい状況が続いている。その一助になればと、NPO法人「Ubdobe」(ウブドベ、東京都世田谷区)が学生や社会人らが福祉施設に〝留学〟し、職場体験できる取り組みに力を入れている。実践を通じて仕事の魅力を知ってもらい、ミスマッチの防止も狙う。今後拡大する介護・福祉ニーズを支える人材確保は急務で、専門家は「仕事に対するイメージを変えることが必要だ」と強調する。

理想との違い

今年1月下旬に福祉留学に参加した障害者就労支援施設で働く山口紗季さん(32)は留学前の職場で、思い描く福祉のあり方と業務内容とのギャップに思い悩み、「留学しても福祉が好きでなければ、福祉の仕事は辞めよう」と考えていた。

山口さんは大学卒業後、札幌市内の障害福祉事業所に約5年間勤め、北海道内の病院に転職した。医療ソーシャルワーカーとして、主に病院で患者やその家族が抱える課題を解決するための調整を担った。ただ、初めての医療現場での不慣れな業務や、患者と病院側との板挟みの日々などで精神的に疲弊していった。

高齢患者が退院後に自宅で過ごすことを希望しても、医師らから、施設入所を指示されたり、検査の数値に基づく管理の徹底などを求められたりし、自身の理想とする「(患者)本人のやりたいことを支える」福祉とかけ離れた実態に目標を見失った。

好きな福祉の仕事から離れるか悩む中、福祉職の働き方改革などの支援を行うウブドベの福祉留学を知り、迷わず応募。青森県内の通所介護施設に約1週間留学した。穏やかに過ごす利用者の姿や職員らの向上心にも触れ、「こんな施設もあるんだ」と狭まった視野が広がり、福祉職の魅力を再確認できたという。

他業種からも

福祉留学は平成31年に開始。留学先はウブドベと連携する全国10カ所以上の介護施設や児童養護施設などから選択でき、希望に応じて約1~2週間、インターンシップとして現場で働く。多様な施設で職業を体験することで、全国の先進事例やさまざまな働き方に触れられ、目指したい福祉の方向性を明確にできる。

ウブドベの担当者は「福祉業界はまだ閉鎖的な文化が残っているが、福祉留学を通じて魅力を向上させ、課題解決につながれば」と話した。

福祉留学には、学生や福祉関係者のほか、他業種からも応募があるという。新型コロナウイルス禍により活動を一時休止したが、令和4年に再開以降、70人を派遣した。参加者からは「私が就きたい仕事はこういうものだと実感した」「介護に対する向き合い方に変化があった」などの声が寄せられたという。

平均年齢50歳

厚生労働省によると、高齢者人口がほぼピークとなる22(2040)年度には、必要な介護職員数が全国で約272万人となり、約57万人不足する見通し。人材確保が急務の一方、介護労働者全体の高齢化や若者の介護職離れが顕著だ。

公益財団法人「介護労働安定センター」の4年度の介護労働実態調査によると、介護労働者の平均年齢は50・0歳。40歳未満は計21・4%だった。加えて、離職率(5年度の同調査)は、20代以下が20・5%▽30代が12・7%▽40代が11・6%▽50代が12・0%―などと、20代以下の離職率が高い。

こうした現状に対し、高齢者福祉に詳しい東京都立大都市環境学部の杉原陽子教授は、人手不足で必要なサービスが利用できなくなる可能性に懸念を示し、「介護サービスの質の低下やそれに伴う事故や虐待の増加が考えられる」と指摘する。人材確保のために「賃金の改善や福祉の仕事に対するきつい、汚いなどのイメージを変えることが求められる」などと訴えた。(村田幸子)

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