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12歳の少女が見た昭和47年 パンダ、沖縄返還…大切なことは全部テレビが教えてくれた プレイバック「昭和100年」

産経ニュース / 2024年11月24日 8時50分

新聞記者の引き上げた会見場で、テレビカメラに向かって退陣の所信を表明する佐藤栄作首相=首相官邸

<当時の出来事や世相を「12歳の子供」の目線で振り返ります。ぜひ、ご家族、ご友人、幼なじみの方と共有してください。>

あさま山荘事件、テレビが中継

こんなにテレビばかり見ていていいのかな、と思う。私の家にカラーテレビが来たからではない。テレビのニュースから目が離せないのだ。一番すごかったのは2月のあさま山荘事件だ。連合赤軍という人たちが山荘の管理人を人質にたてこもっているという。

発生から10日近くもニュースでやっていたけど、警官隊が突入した28日は朝からずっとテレビ中継されていた。学校でもみんな落ち着かない様子で、昼休みに先生が少しだけ見せてくれたテレビでは、アナウンサーが「先ほど機動隊員が撃たれました」と興奮した様子でしゃべっていて、クラス中がざわついた。

学校が終わって急いで家に帰ると、お母さんとおばあちゃんもテレビにくぎ付けで晩ご飯の準備も遅くなった。ようやく犯人全員が捕まったのは午後6時すぎ。テレビの中の現場はもう真っ暗で、機動隊の人たちは本当に寒そうだった。私がぬくぬくとコタツに入りながら、そんな映像を見ていることが不思議で、申し訳ないとも思った。

千日デパート火災/横井庄一さん帰国

1月にグアムのジャングルで見つかり2月に帰国した元日本兵の横井庄一さんのニュースもテレビで見た。今年は戦後27年の年となるが、この人の中ではずっと戦争が続いていたのだろう。「恥ずかしながら帰ってまいりました」という言葉は流行語にもなった。愛知の実家に帰るところやお墓参りをするところも全部テレビに映されていて、ちょっと気の毒に思ったけど、結局私もずっと見てしまった。

5月に起きた大阪の千日デパート火災では100人以上が亡くなった。営業時間が終わってからの出火だったが、他の階で営業していた飲食店などが巻き込まれた。ニュースでは逃げ遅れた人たちがビルから体を出して助けを求めている映像や、「人が飛び降りるのを見た」と話す目撃者の話などもやっていて、とても生々しかった。

わくわくした気持ちでテレビが見られたのは2月の札幌冬季五輪だ。しかも今回から全部がカラー放送になり、「日の丸飛行隊」と呼ばれる日本人のジャンプ選手3人が金銀銅を独占するシーンはちょうど日曜日で生で見ることができた。一方でドイツのミュンヘンで行われた夏季五輪では、まるであさま山荘みたいにテロリストの籠城が現地のテレビで生中継されたと聞いて驚いた。

5月に沖縄が返還され、沖縄では車が右側通行ということを知ったのもテレビ、9月の日中共同声明で、中国人が人民服という服を着て、みんな自転車に乗っているということを知ったのもテレビだ。

パンダのカンカン、ランランも結局テレビでしか見ていない。上野動物園が大混雑だから仕方ないが、行った友達に聞いても「全然見えなかった。テレビのほうがよく見える」と言っていた。

7月に辞めた佐藤栄作首相は退陣の記者会見で「テレビカメラはどこかね、国民に直接話したい。新聞記者は帰ってくれ」などと話し、記者全員が退席した。私も佐藤さんの気持ちはよくわかる。なぜなら映像はそのままを映すのでウソはないと思うからだ。でも、もしテレビがわざとウソを流せば、逆にその影響は大変なことになるとも思う。

それにしても、私が小さい時はまだ家にテレビがなかったのに、そのころの生活がもう思い出せない。テレビがなかった時代は、みんな世の中のことをどうやって知っていたんだろう。

※2月19日から28日まで10日間に及んだあさま山荘事件では犯人グループらの発砲で警察官2人、民間人1人死亡、重軽傷者27人を出した。28日の総世帯視聴率は民放、NHK合わせて89・7%を記録、現在も報道番組の視聴率として最高という。

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