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世代超えて人と人つなぐ場に 「深川えんみち」を運営するNPO法人理事長・押切道子さん TOKYOまち・ひと物語

産経ニュース / 2025年2月12日 21時9分

深川えんみちでは、デイサービスなどで滞在する高齢者と子供たちが触れ合えるようになっている(楠瀬友将氏撮影)

東京メトロ門前仲町駅を下車し、深川不動堂に向かう道を右に曲がると、ガラス張りのおしゃれな建物が現れた。一見するとカフェのようだが、その正体は、学童保育クラブと高齢者のデイサービスなどが入る複合型の福祉施設「深川えんみち」(東京都江東区)だ。一般の人たちが本を貸し出す私設図書館「エンミチ文庫」も併設。施設を運営するNPO法人「地域で育つ元気な子」の押切道子理事長(48)は、「人と人をつなぐ場でありたい」と思いを語る。

デイサービスと学童

平日午後2時半を回った頃、学校を終えた小学生たちが集まってきた。1階でデイサービスを受ける高齢者らに「おかえり」と迎えられると、学童のある2階へ。子供の声が響き始め、館内は活気に満ちていく。

学童は押切さんらのNPO法人が、デイサービスは別の社会福祉法人が運営するが、押切さんは「子供たちが1階にやってきて、お年寄りたちと過ごすことも多い」と説明する。

深川えんみちがオープンしたのは昨年4月。建設に当たっては「利用者らが触れ合える構造とすることにこだわった」という。玄関を共通にし、学校から帰った子供たちは高齢者らの姿を見ながら、学童に向かう動線になっている。

デイサービスが開かれる1階広間は「家にいるような居心地の良さ」を演出。子供たちも利用でき、木のテーブルを囲んで高齢者の昔話に耳を傾けたり、宿題をみてもらったりする姿も見られるのだとか。

地域の人も立ち寄り

エンミチ文庫は、「地域の人たちが触れ合うための仕掛け」だ。

玄関を入ってすぐの通路の壁に本棚を設置。1区画を月額2千円で貸し出し、借り主たちはそこにお勧めの本を並べられる。読みたい人は貸し出しカード(500円)を作った上で、自由に借りることができるという。

本棚には児童書や小説、科学、建築などさまざまなジャンルの書籍が並び、蔵書から借り主の人柄や思いが伝わる。ふらりと立ち寄った人が興味深げに眺める姿もあり、老若男女が利用する。

「思いを交換する場があることで、地域に関心を持ったり、住民同士で会話が生まれたりすることもあるかもしれない」。押切さんは、そんなささやかな期待を込める。

「心をつくる」仕事

もともと、「創造すること」に興味があったという押切さん。大学は芸術学部だったが、教育学部の授業を受けたことをきっかけに「心をつくる幼児教育に興味を持った」。

幼稚園教諭の資格を取得し、24歳で幼稚園に就職。経験を積みながら大学院にも通って学びを深めた後、今の学童で働き始めた。

当時、運営を担っていたのはわが子の預け先に窮する保護者たちで、現場を支えるスタッフらは幼児教育を学んだ者ばかりではなかった。子供をぞんざいに扱う姿も目立ち、学童を嫌がる声があちらこちらから聞こえてきた。

そんな学童の運営を引き継ぐことを決めたのは30代の頃。子供たちが「行きたくなる場所」を目指して同僚たちと奮闘する一方、豊かな育ちを支えるには、薄れつつある「世代を超えた交流」や「地域間のつながり」が欠かせないとの考えを深めるようにもなった。

地域の絆を育む場となることを願って開設した「深川えんみち」。施設では乳児と親らの子育て支援も行われているほか、最近ではボランティアらが中学生向けに英語教室を開くなど、新たな展開もみせつつある。

子供にとっても、大人にとってもかけがえのない自分たちの街。「知恵を出し合いながら、みんなでこの地域をつくっていきたい」。柔らかな笑顔の中にも、強い思いをのぞかせた。(三宅陽子)

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