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誰が大統領になっても大丈夫 話の肖像画 元駐米日本大使・藤崎一郎<1>

産経ニュース / 2024年9月1日 10時0分

元駐米大使の藤崎一郎さん=9日、東京都港区(関勝行撮影)

《新たな米国大統領が誕生する。民主党のカマラ・ハリス米副大統領(59)が米国初の女性大統領となるのか、あるいは暗殺をかろうじてかわした共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)が返り咲くのか―》

私はかねがね米大統領選挙はクリスマスプレゼントみたいなものだと言ってきた。当日、箱を開けて「ああちょうど欲しかったんだ」と言えばいい。というかそれしかない。大切なのは、新大統領と、日本はよい関係をつくることに尽きる。当たり前の話だ。先方も日本の首相は誰がいいなんて言わない。

選挙の結果は、少数の接戦州次第だ。僅差だろうし、結果を予測することは困難だ。これから何が起きるかも、わからない。ハリスさん、トランプさん、どちらも十分、大統領となりうる。

米国大統領が代わると、政策は大きく変わるだろう。たとえば、トランプさんはかつて法人税を下げたが、さらに下げるべきだと言う。中絶を認めるかは州が決めるべきだとし、銃砲規制に反対する。片やバイデンさんやハリスさんは、法人税の引き上げや富裕層への増税が必要だとの立場だ。中絶の判断は女性個人に認められるべきだし、銃砲規制すべきだという。環境問題のパリ協定やユネスコ、国連人権理事会からの脱退でも正反対の姿勢だ。

米国と違って、日本の場合、政策の差は小さい。大統領が代われば、日本は米国との関係をうまく調整しつつ、TPPで行ったように自らの国益にかかわる立場、政策は貫いていくことになろう。

安倍晋三首相はトランプさんとうまくやった。ほかの人では難しいとか訳知り顔に言う人がいるがなんの根拠もない。良好な関係をつくるには首脳同士1対1の場をつくることだ。そして先方の期待をしっかり把握しつつ、おおやけの場で説教じみたことを言ったりしないことだ。英国のメイさんやドイツのメルケルさん、カナダのトルドーさんたちは、トランプさんが前回大統領になったとき、彼の発言に対し、民主主義はこういうものだとおおやけに言い返した。これは、米国の大統領に対して何を言うのかと、トランプさんの怒りを買った。豪州の首相は最初の電話首脳会談で、難民問題でオバマ政権の政策を確認しようとしたらトランプさんに電話をガシャンと切られたという。本当なら礼を失しているとは思うが、初めから頼みごとを持ち出すのはうまくなかった。安倍さんは、おおやけな場で批判めいたことはせず、トランプさんに日本の対米投資増を直接わかりやすい形で説明するなど工夫した。これは他の方でもできる。

安倍首相の師匠格の小泉純一郎首相も、言うべきことは言いつつブッシュ大統領と緊密な関係を築いていた。補佐として首脳会談に何度も同席したので実感だ。

《岸田文雄首相(67)は27日に実施される自民党総裁選挙には出馬しないと表明した。これによって、日本にも近く新たな首相が誕生する》

正直、ハリスさん、トランプさんのどちらが米国大統領になってもいいと思う。岸田首相のおかげで防衛費倍増や反撃能力など自発的に準備済みであり、どちらが大統領になってもきちんと対応できる。岸田首相の後を継ぐ日本の新しいリーダーが誰になるのか、現段階ではわからないが、大切なのは、米国の新大統領と1対1のきちんとした関係を築くことだ。(聞き手 内藤泰朗)

【プロフィル】藤崎一郎

ふじさきいちろう 昭和22(1947)年、神奈川県生まれ。慶応義塾大、スタンフォード大大学院で学ぶ。44年、外務省に入り、北米局長、外務審議官、在ジュネーブ国際機関代表部大使などを歴任し、駐米大使を務めて退官。日米協会会長。退官後は教育に注力、上智大教授、中曽根平和研究所理事長を経て北鎌倉女子学園理事長に。著書に「まだ間に合う 元駐米大使の置き土産」。

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