新商品は「海底焼き」 茨城のアンコウ料理旅館が香港への水産物禁輸で開発
産経ニュース / 2024年8月28日 16時0分
アンコウを使ったさまざまな料理を提供する茨城県北茨城市の「あんこうの宿まるまつ旅館」が、ホタテの貝柱とあん肝を組み合わせた新商品「海底焼き」を開発した。同旅館では、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出で香港の提携店へアンコウ製品が提供できなくなっており、新商品には「処理水問題がまだ続いていることを知ってほしい」との願いも込められている。
2つの食材合わせる
海底焼きは、北海道産のホタテの貝柱と、北茨城市の平潟港などで水揚げされるアンコウのあん肝が主な材料。あん肝には3種類のみそを練り込んであり、貝柱やバターとともにホタテの貝殻を器にして火を通し、混ぜ合わせて食べる。
「あん肝とホタテは相性がバッチリ。相乗効果でうま味が増し、おかずになるし、アルコール類にも合う自信作」とまるみつ旅館の武子能久社長(48)。
新商品開発のきっかけは、昨年8月に始まった福島第1原発処理水の海洋放出だった。
処理水問題で損失
同旅館は、一昨年11月から香港の提携店「まるみつ天心」へアンコウ鍋のセットやあん肝を使ったラーメンなどを卸していたが、処理水の放出で香港政府が茨城や北海道など10都道県の水産物輸入禁止措置を決定。加工品も対象となり、提携店への製品が提供できなくなった。
一時は約1200万円相当の在庫を抱え、うち約800万円分は通信販売や北茨城市へのふるさと納税の返礼品などとしてさばけたが、残る400万円分は賞味期限切れを迎え、廃棄処分となった。
問題風化を懸念
今回の海底焼き開発は損失分回収が第一目的だが、武子社長は「処理水放出は1年経って忘れられる傾向にある。1人でも多くの人に問題を知ってほしい」と同じく禁輸措置となったホタテと組み合わせた新商品へ込めた思いを語る。
「海底焼き」は冷凍製品で、2人前1920円で、同旅館の売店で販売中。9月1日からは通販でも扱い、10月中には北茨城市のふるさと納税の返礼品にも加えてもらう予定だ。他に、サッカーJ2・水戸ホーリーホックの本拠地・ケーズデンキスタジアム水戸など、イベント会場でも調理品を販売する。こちらは1人前880円。
売り上げの一部は、香港の提携店へ支援のため寄付される予定となっている。
商品に関する問い合わせは同旅館(0293・46・0569)。
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