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頼総統に忠告「〝王殺し〟にはなるな」 話の肖像画 モラロジー道徳教育財団顧問・金美齢<2>

産経ニュース / 2024年8月2日 10時0分

《今年5月に台湾の総統となった頼清徳氏は親日派で知られる。台南市長だった2011(平成23)年4月には東日本大震災直後の姉妹都市・仙台に駆けつけて義援金を手渡し、副総統だった22(令和4)年7月には安倍晋三元首相の葬儀に電撃参列した》

頼清徳は若いころからよく知っている。私はメモを残さないので日時は覚えてないけど、初めて会ったのは、民主化運動が弾圧された「美麗島事件」のリーダーだった姚嘉文(民進党主席や総統府資政=最高顧問=などを歴任)を団長とする訪日団が、私と夫の周英明の事務所を訪ねてきたとき。頼清徳はその一員だった。

かつては国民党以外の政治活動は反政府とみなされて「党外」と言われ、当局の監視対象だった。将来有望な若いエリート医師の頼清徳が党外活動に参加し、日本で独立運動に携わってブラックリストに載っている私たち夫婦にわざわざ会いに来たのよ。肝が据わっているな、と思ったのでよく覚えている。

頼清徳は日本の統治時代を知らない世代だけど、台湾に残る「日本精神(リップンチェンシン)」を大切にしている。台南市長時代の11年、烏山頭(うさんとう)ダムと水利施設の整備に尽力した日本人技師をたたえた「八田與一(はったよいち)記念公園」を開園した。

また14年には、国民党軍による本省人(元から台湾に住んでいる人)の弾圧「二・二八事件」から市民を守ろうとした弁護士、坂井徳章(湯徳章)が公開銃殺された日を「台南市正義與勇気紀念日(正義と勇気の日)」に制定した。この坂井弁護士については、門田隆将がノンフィクション「汝、ふたつの故国に殉ず」にまとめ、台湾でも翻訳されて読まれたわね。

この「汝、ふたつの故国に殉ず」か、「この命、義に捧(ささ)ぐ」(共産党軍の金門島上陸阻止に尽力した旧日本陸軍中将のノンフィクション)か、よく覚えてないけど、門田隆将の出版記念会が台南市内で開かれて私も参加した。たまたま近くの公園で開かれていたイベントに市長の頼清徳がいたので、門田隆将と訪ねて再会したこともあった。

《安倍元首相の葬儀でも再会は偶然だった》

頼清徳の来日は公にはなってなかったから、東京・芝公園の増上寺で見かけて「あれ」って。(大使館にあたる)台北駐日経済文化代表処の人が見当たらなかったので、安倍事務所の方に頼んで席を作ってもらい、いっしょに列席した。聞いたら代表処の人と前日、安倍さんのご自宅を弔問したとのことだった。

増上寺では列席していた国会議員たちに頼清徳を紹介したんだけど、日本では初対面の人とは名刺交換するじゃない。でも台湾には名刺交換の文化がない。名刺をもらうばかりで、彼は恐縮しきりだったわね。

《厳しい忠告も》

4年前の総統選の民進党予備選挙で最大派閥「新潮流派」の頼清徳が当時の蔡英文総統の対抗馬になった。ちょうど統一地方選で国民党に敗れ、蔡英文が窮地に追い込まれていたころ。たまたま来日した頼清徳と会合で隣り合わせになったので、彼に言った。「〝王殺し〟にはなるな」。シェークスピアの戯曲「マクベス」の悲劇を例えに「今は蔡英文を支えて4年後を待て」と。無事に蔡英文が2期目の総統になったのでよかったけど。

《頼清徳の当選で、民進党は初の3期連続政権に》

5月の就任式には最前列に招待されたんだけど、柱が邪魔になり、演説する頼清徳の雄姿が見られなかった。「Aの1番」は特等席だけど端っこなのよ。事務担当者には気の利かない人がいるからねえ…。(聞き手 大野正利)

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