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農水相の〝口先介入〟でコメ価格変動も 備蓄米運用ルール見直しで懸念される市場への影響

産経ニュース / 2025年1月31日 17時8分

政府備蓄米が保管されている倉庫=東京都台東区

コメ価格の高騰を受け、農林水産省は31日、政府備蓄米の運用ルールの見直しを決めた。大凶作など生産量が大幅に減ったときに限り放出できた備蓄米を、コメの円滑な流通に支障が生じた場合に農水相の判断で集荷業者に販売できるようになる。備蓄米を販売して流通量を増やすことができれば、高止まりする米価を抑制する効果は期待できる。ただ、国による市場介入はコメ相場の不安定化を招きかねない。今後は農水相の発言次第でコメ価格が大きく変動する可能性もある。

江藤氏の会見後に相場下落

実際、農水相による口先介入とみられる相場の動きが、すでに起きている。24日には江藤拓農水相が備蓄米の運用方針の見直しを言及したが、備蓄米が市場に出回ることによる品薄高改善への期待からか、コメの売りが活発になり、相場は下落に転じた。堂島取引所(大阪市)によると、取引期限が近い2月限(ぎり)の同日の終値は、前市比840円安の2万5200円(60キロ)となり、値幅制限の下限となるストップ安(2万5190円)に迫った。

宇都宮大の小川真如(まさゆき)助教(農業経済学)は、「新たな備蓄米の運用ルールが適用されれば、短期的には米価を抑え、流通上の価格高騰を抑制できる」と一定の効果があると説明する。一方で、「長期的にはコメの価格、生産・流通の安定化につながらず、農水相の口先介入への不安感の増大につながるため、今後のコメの生産・流通に大きな禍根を残す」と懸念を示す。

政府備蓄米は、価格変動対策の目的では放出できないため、今回の運用ルールの見直しでは、政府の買い戻し条件付きで集荷業者に販売される運用となる。現状、集荷業者への売り渡し価格や買い戻し価格の決め方などの詳細は詰めていないが、「買い戻し価格が売り渡し価格を下回れば国の追加的な財政負担(差損)が、その逆の場合は差益が生じる可能性もある」(小川氏)という。

コメ政策の抜本見直しは手つかず

昨年夏にコメ不足が顕在化して以降、JAを介さずに農家から直接コメを仕入れる事業者が急増し、集荷競争は激化した。現在流通している令和6年産米は、前年産より生産量は18万トン増えたものの、JAなどの大手業者による集荷量は前年を約2割(17万トン)下回った。こうした流通停滞の背景には、一部業者が相場の高騰をにらんで在庫を抱え込む動きもあるとされ、価格の高止まり要因ともなっている。

一方で、コメ不足や価格高騰といった食料安全保障に直結する問題が顕在化しているにもかかわらず、コメ政策の抜本的な見直しは手つかずのままだ。

政府は平成30年、農家の競争力向上などを図るため国がコメの生産量を調整する減反政策を廃止したが、その後も全国の生産量の目安を提示し、補助金で転作を促すなどして実質的な減反を続けている。

現在は国内人口の減少などを踏まえて生産量を絞る方向で調整が進む。だが、コメ余りにならないようあらかじめ需要に合わせて生産量を絞っていることが足かせになる懸念もある。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「訪日客によるコメ需要の急増や猛暑などの気候変動で生産が打撃を受けるような不測の事態が起きた際、柔軟に対応できない状況を招いている」と指摘する。(西村利也)

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