「できたら地元で」結婚・育児に懸念多い東京圏 帰郷念頭の20代 情報浸透に課題 私たちが子供いらないと思う理由
産経ニュース / 2024年10月13日 12時0分
地方に住む若者の東京圏への流出が止まらない。生活コストの高さなど、結婚や出産を遠ざける要素が揃う環境に適齢期の男女が集まる傾向は、日本の少子化に拍車をかける根本的な問題だ。一方で、将来的には出身地に戻る「Uターン」を検討する若者は少なくない。故郷を離れたからこそ気付く魅力もあるとみられ、地元自治体などの情報発信も鍵になる。
美波25歳、子供「2人は欲しい」
横浜市で教育関係の仕事をしている山本美波(25)=仮名=のライフプランは、ある程度はっきりしている。「30歳ごろまでには結婚し、自分が姉妹なので子供も2人は欲しい」。最近までパートナーはおらず、「少し焦りもあった」が、最近年上の男性と巡り合った。
一方、将来を過ごす場所として理想とするのは、東京圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)ではないという。
「生活コストや子育て関連の環境面を考えたとき、今のエリアはちょっと考えにくい。地元の名古屋でそういう形になれたら、最高です」
名古屋市で生まれ育った。現役の小学校教諭である父の影響もあり、教職に興味を抱いたこともあったが、進学した市内の大学では心理学を専攻。今の職場では、子供たちに直接、勉強を教えることはないが、個別に進路相談に乗るなど広く下支えする立場に就く。
志望通りの就職先。ただ、置かれた環境が、想定とは大きく異なった。
令和4年の入社時、地元での勤務を強く希望し、人事側からもその可能性が高いと説明を受けていたが、最初の配属先は本社を置く東京都内にあるオフィスだった。新人教育に力を入れるべく、この年から都心で研修を実施することになったのが、理由のようだった。
「ちょっとショックでした」。名古屋に残る友人も多い中、上京した。ほどなく横浜市のオフィスへ転勤になり、昨年から同市で1人で暮らしている。
一極集中の流れ変わらず
政府は今年6月、10年前の平成26年から本格的に取り組んできた「地方創生」について、成果や課題を検証した報告書を発表した。「人口減少や東京圏への一極集中の是正といった目標に対し、大きな流れを変えるには至らず、厳しい状況にある」と総括した。
報告書では、多くの地方自治体で進学や就職などを機とした10代後半から20代の若者の東京圏への転入超過に、歯止めがかかっておらず、男性より女性にその傾向が顕著だと分析した。Uターンや、生まれ育った地域以外に移住する「Iターン」を進める重要性は増しており、各自治体では、転居・住宅費用の補助のほか、子供の数に応じた「出産祝い金」など、子育て関連にも手厚い経済支援策を講じている。
自発的な上京ではなかった山本のケースも、多くの企業が本社機能を首都圏に集中させている中では、結果的に地元から若者が離れる状況を作り出している面もある。
一方、山本は名古屋や横浜の分を含め、U・Iターンを促す自治体の取り組みについて、「ほとんど知らない」という。「そろそろ結婚が視野に入ってきたような段階になれば、具体的に調べ始めると思う」というが、こうしたケースで当事者らに施策をどのようにアピールしていくのかは、重要な課題だ。
プッシュ型はなじまない
ただ、こども家庭庁の担当者は、結婚や出産には個人の価値観が反映されていることを踏まえ、「行政によるプッシュ型の情報発信は、あまりなじまない」とも語る。地元の高校や大学などで関連イベントを打ち出そうにも、「子供を産まないといけない、結婚しなければならないといった価値観の押し付けになりうる」との懸念が、各自治体レベルも含めて強いといい、「発信手法はSNSの活用などにとどまっている」とする。
名古屋での結婚生活を思い描く山本は、地元の魅力について、「名古屋駅周辺はかなり都会的な雰囲気だが、少し離れると豊かな自然がある。そのバランスがちょうどいいし、なにより両親が近くにいるという安心感が大きい」と話す。今の会社は午後から勤務が始まり、退社は午後9時過ぎとかなり遅い。育休が取得できる期間は子供が3歳になるまでと決められているから、やはり親族のサポートは欠かせない。
人生観としては、「仕事よりも自分の家庭を持つことに、より重要性を感じている」。一方で「今の職場で、業務の習熟度を上げていきたい。腰を据えて取り組んでいきたい。そういう気持ちが強くなってきた」と打ち明ける。
総務省統計局の調査によると、令和元年時点で東京圏の事業所数が全国に占める割合は3割近くに上っている。地元志向が強い若者でも、いったんは東京圏へ移らざるをえないといった構図がある。
会社機能の移転や分散などを含め、官民を挙げた社会全体のシフトチェンジが求められる。(敬称略)
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