差別しない 海外経験が「モリタク」のもと 人種の違いを痛感 森永卓郎さんが残した言葉 話の肖像画 経済アナリスト・森永卓郎<9>
産経ニュース / 2025年2月9日 10時0分
森永さんは1月28日に亡くなられました。令和6年12月の取材をもとに連載します。
◇
《小学4年生のころ、毎日新聞の記者でウィーン支局長だった父、京一氏とともに、一家でオーストリアで暮らしていた。1年くらいたったある日のこと。支局に1枚のテレックスが届いた。これが、卓郎少年に大きな衝撃を与える》
テレックスから打ち出された紙には、「森永京一殿をジュネーブ支局長に任じる。ついては何月何日までに転居されたし」といったことが書いてあったんですよ。私はあわててランドセルから世界地図帳を出して広げました。
ジュネーブってどこだ? スイスだ。言葉は? なんとフランス語だ。
こっちはね、苦労して英語を覚えて、今度はようやくドイツ語でもコミュニケーションがとれるようになったばかりなんですよ。それなのに、また別の言葉を覚えないといけない。父の仕事に翻弄され続けたわけです。もうね、毎日新聞を殴ってやりたかったですね。
《3カ国目のスイスでも「差別はひどかった」と顔をしかめた。あえて3カ国のうち「一番ましだったと思う国」を尋ねてみると》
うーん、それは難しいですね。しいて言えば、スイスになるのかな。
景色がいい、とかそういうことではないんです。そのときに偶然、当時のチェコスロバキアから来た転校生2人が一緒だった。彼らも仏語が話せなかったんです。言葉ができない者同士の連帯みたいなものがあったんですよ。
それと、なぜかあのころ、ジュネーブでビー玉遊びがはやっていたんです。これはもう当時の日本の子供にとっては、国技みたいなものでしたからね。この遊びのときだけは、私はみんなの尊敬を集めることができました。
それに3カ国目だから、子供なりに少しは海外で生きていくすべみたいなものが身に付いていたかもしれないですね。
でも、ちょっとはましだったというだけで、やっぱり人間扱いをされているとは思えませんでした。チェコスロバキアの白人2人と黄色人種の私とでは、周囲の扱いは明らかに違いましたから。
《3カ国での経験から、「二度と海外で住みたいとは思わない」と語った。それでも、海外暮らしから得た「良い面」はないのだろうか》
良いか悪いかは微妙なんですけれども、海外では黙って従っている人は、全く評価されないんですよ。授業のときに分からなかったら、すぐに自分からアクションを取って、分かるまで聞かないといけない。聞かなかった人は、もうそれでアウトなんです。誰も助けてくれない。
そこで身に付いた「自分をきちんと主張する」という習慣は、日本に帰国後もずっと引きずってしまいましたね。今でも引っ張っていると思います。
《幼少期の海外でのつらい記憶は、生涯のテーマに「格差」を選んだことにもつながった》
やはり、海外で子供のときに受けた差別が私の根底にはあると思います。自分が差別で苦しんだだけに、差別や格差が嫌いなんです。私は誰も差別しない。常に平等でありたい。経済に詳しい人でも、まったく知識のない人でも態度を変えません。
常にオープンな態度を取っていると、脇は甘くなりがちです。でも、そういう私だからこそ、〝いじられキャラ〟のタレント「モリタク」として活躍できたのかもしれません。おかげで今までさんざん言いたいことを言わせてもらったし、お茶の間に受け入れられることもできた、という気がしています。(聞き手 岡本耕治)
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