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書籍に学び、知性を磨いてきた 新聞を毎日読めば知的水準は上がる 渡辺恒雄さん(3) アーカイブ「活字文化考」

産経ニュース / 2024年12月28日 13時0分

読売新聞の渡辺恒雄社長=平成7年9月21日

――活字は繰り返し何回でも読み直せること。読みたいときに読めること。活字の魅力、機能はそういうことなんでしょうね。活字文化を個別に見ますと、書籍というのは文化そのものという気がしますが、いかがですか。

渡辺 書籍もエロ本みたいなものがあるから全部が高度な文化的なものとは思わないけれど、やはり古典とか、人類の文化遺産としての文学、哲学、その他の科学、こういうものは書籍に学び、われわれは自分たちの知性を磨いてきたわけです。書籍のない世界とは、相当人間的に堕落した世界になるんじゃないですかね。

――考える習慣のない世界になってしまうかもしれないですね。

渡辺 それがマルチメディア時代で一番恐ろしいことなんだな。教育心理学、社会心理学的にもマルチメディアというものを考えなきゃいけない。いま日本の産業は空洞化した、来世紀の産業は何か、絶えず技術革新をやっていかなければ産業社会が衰亡するじゃないか-などといわれている。そこで、次世代産業は情報通信産業、それはマルチメディアを武器とするんだといわれている。

マルチメディアによって、たとえば二〇一〇年代には二百三十兆円を超える市場が形成され、二百万人ぐらいの雇用が新たに創出されるとか、産業政策、労働政策的な面だけで議論されている。いまメーカーも商社も夢中になってマルチメディアに取りつこうとしているが、一番もうかる分野を他の産業や企業に取られちゃ大変だという焦りや争いがあるわけですよ。

しかし、マルチメディア時代の負の側面、影の面をみていない。マルチメディアについての本が百冊ぐらい出ていても、そういうことについて書かれているのは一冊か二冊しかない。

たとえばインターネットを通じた防止しようがない犯罪がはんらんしてくる。それをどうするか。また、マルチメディア時代に入ってつぶれる産業もあり、そこから失業が相当出てくる。マルチメディア産業で二百万人の雇用が創出されるかもしらんが、一方で二百万人の失業者が出た場合、それをどうするのか考える必要がある。そういうことがいま議論されていないですよね。

――書籍の文化とともに、新聞が日本の文化に果たしている役割については、どうでしょう。

渡辺 明治以後、新聞はとにかく毎日宅配され、われわれは活字を読んでいた。夏目漱石も、徳富蘆花も、みんな連載小説として新聞に出ておったんですね。文学作品まで含めて、その日その日の政治的、経済的、社会的、学問的な情報がまんべんなくちりばめられている。それを毎日毎日読んでいれば、自然に知的水準は上がるし、識字率も上がります。これこそ文化的な意義じゃないかな。

世界中を見渡したときに、日本では千人に対して五、六百部の新聞が発行されてますね。あんまり外国のことを悪くいっちゃいけないんだが、たとえばインドは千人当たり十九部しか新聞が発行されていない。一人当たりのGNPも極めて低い。ブラジルも最近は社会的、政治的安定度を高めてきたが、一時は非常に悪かった。ブラジルは千人当たり三十九部ですよ。 (文化部長 小林静雄)

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