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テリトリー制は合理的な方法で新聞販売店の競争原理は守られている 渡辺恒雄さん(9) アーカイブ「活字文化考」

産経ニュース / 2024年12月30日 11時0分

読売新聞の渡辺恒雄社長=平成7年9月21日

――過疎地では一つの販売店で読売も産経も配達するというふうにはできないものでしょうか。

渡辺 いや、できなくはない。地域によってはすでに合売店があるんですから。たとえばこの間亡くなった参院議員の山本富雄さんは、親子三代にわたって新聞販売店の店主だった。群馬県の草津です。彼の店は合売店ですよ。かなり広い地域で合売をやっている店もあるんです。

《合売店 新聞販売店はふつう、特定の新聞だけを売る専売店だが、地域によっては多数の新聞を一括して取り扱う「合売店」がある》

ただ、なんでも合売がいいかというと、そうでもない。都内で販売正常化を徹底するため、共集、共配、要するに集金も配達も一軒の店がやるというモデル地区を羽田(大田区)、小台(足立区)、月島(中央区)と、都内の三カ所でやっている。ですが、三カ所とも購読率が一二%以上も減っている。つまり、合売にすると減るんですよ。販売店同士の競争がなくなるから。完全合売にしたら、競争がなくなって定時に配達されなくなり、購読者が減るんですよ。

《共集、共配 販売正常化を目的に昭和五十二年から小台、月島、羽田の順で行われているシステム。各紙の販売店が協定した地域内ではお互いに景品を使った購読勧誘は行わない代わりに、それぞれの販売店は全紙を戸別配達し、集金もする。たとえば、一~三丁目はA販売店、四~六丁目はB販売店などとエリアを決めて、共同配達、共同集金を行っている》

――ある意味では、独占と同じような状態が一つの地域にできちゃう。

渡辺 できちゃうわけですね。たとえば、読売と産経は全部一軒の店で売りましょう、朝日と毎日は一緒にどうぞ、ということがあり得たとする。しかし、その二軒の店は猛烈にサービス競争をする。定時に正確に配達するというサービス競争ですよ。だけど、全部の新聞を一軒の店で扱うとなったら、競争の必要がなくなるから、一刻も早く配ろうというインセンティブ(刺激)が働かない。「それなら駅へ行って買えばいいや」ということになってしまう。これは結果的には競争制限で、公取委の主張する競争制限の禁止の逆になってしまうわけです。

――販売店のテリトリー制はやめられないものですか。

渡辺 一つのテリトリーのなかで、同じ新聞社の販売店が争うようなことになると、秩序立った上品な競争じゃなくなる可能性が非常に強いです。それに、極めて非能率ですよ。同じ地域を一軒の店じゃなくて二軒の店が虫食い状態で入り込んで、ある意味では一つの新聞を二人の人間が、同じ時間に一回ずつ、合わせて二回、回らなきゃならんという不経済な状態が起きる。コストアップの原因になります。コストアップすれば定価を上げなきゃいかんということになるが、定価をやたら上げるわけにはいかないんです。

だからテリトリー制は一番効率的、合理的な方法で、競争の原理は確実に守られている。なぜかというと他紙があるからね。同じ社同士でけんかさせる必要はひとつもない。それによってよくなる面よりも、金がかかって悪くなる面のほうが多いですよ。 (文化部長 小林静雄)

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