カルティエが描く女性のこれから「ともに生き、ともに輝く未来へ」 伝統と革新
産経ニュース / 2024年9月12日 10時0分
来年4月の開幕まで7カ月に迫った2025年大阪・関西万博。仏高級ブランド「カルティエ」は、内閣府などと共同で「ウーマンズ パビリオン」を出展する。「ともに生き、ともに輝く未来へ」をテーマに、女性のエンパワーメント(力・権限の付与)や、世代間の平等、サステナビリティー(持続可能性)について考える展示を計画している。
「ジェンダー(性別)による不平等は、女性だけで解決できる問題ではありません。男女や世代を問わず多くの人の気付きにつなげられたらと思います」
カルティエ ジャパンのプレジデント&CEO(最高経営責任者)、宮地純さんはこう説明する。
女性起業家や次世代の学びを支援
21年のドバイ万博に続く「ウーマンズ パビリオン」の出展は、受け継がれてきたブランドの想いの象徴でもある。1933年に初代クリエイティブディレクターに就任したジャンヌ・トゥーサンを皮切りに、女性の自立や活躍を社内外で推進してきた。2006年には女性起業家を支援する「カルティエ ウーマンズ イニシアチブ(CWI)」を創設。これまで環境や教育、ジェンダーなどの社会課題に向き合う66カ国の計330人を選出し、助成金の総額は950万ドル(約14億円)に上る。
「女性リーダー同士が学び、助け合うコミュニティーも構築し、成長を後押ししています。課題解決につながるビジネスの発展は、社会への影響力を飛躍的に拡大する力を秘めていると思います」
日本国内でも22(令和4)年、女性リーダー育成を目指して一般社団法人「カレッジ・ウイメンズ・アソシエーション・オブ・ジャパン(CWAJ)」 と共同で奨学金制度を創設。食糧問題に取り組む学生などの海外大学院への留学を支援する。同年には筑波大と「DE&I(多様性、公平性、包括性)」をテーマに共同研究プロジェクトを立ち上げ、次世代とともに社会の変革を目指している。
「女性の活躍を訴える必要のない時代が理想だと思います。若い世代はジェンダーなどの考え方が確実に変化しているので、未来へ向け流れを加速させることが大切です」
普遍的な美しさ支えるサステナビリティー
万博の「ウーマンズ パビリオン」は、女性のエンパワーメントなどと並び、「大いなる地球」もテーマとしている。パビリオンのファサード(外観)は、ドバイ万博の日本館で使われた「組子ファサード」をリユースする。
カルティエは08年から、同社の事業による二酸化炭素(CO2)排出量の測定を徹底し、削減にも努める。それでも削減しきれなかった分はオフセット(相殺)を行う。22年には「グッチ」などを傘下に持つ高級ブランドグループ「ケリング」と業界全体でサステナビリティーへの取り組みを強化する「ウォッチ&ジュエリー イニシアティブ 2030」を設立した。
「より責任あるものづくりの在り方を考え続け、アクションに移していますが、SDGs(持続可能な開発目標)は1社のみで達成できるものではありません。業界全体を巻き込んで、より大きなインパクトにつなげたいと考えています」と宮地さん。
仕入れ先や流通パートナーへの再生可能エネルギー導入も進め、環境負荷削減に取り組む。一方で、ブランドを象徴する製品も持続可能なモデルへと進化させてきた。代表例が1917年の誕生以来、洗練された角型デザインで愛される名作腕時計「タンク」だ。
2021年に発表した「タンク マスト」は、植物由来の新素材のストラップを採用。従来のカーフ(子牛)レザーのものと比べ、生産に使う電力や水、排出するCO2など、環境への負荷を約6分の1に抑えたという。
「カルティエのクリエーションの出発点は、あくまで普遍的な美しさです。世代を超えて受け継がれるタイムレスなデザインの製品を支えるために、持続可能なモノづくりが必要なのだと思います」
(聞き手 会田聡)
みやち・じゅん
京都大法学部卒業後、外資系証券会社に入社。仏ビジネススクールINSEADでMBAを取得後、ラグジュアリー業界に転身。2017年にリシュモン ジャパン入社。カルティエ ジャパン マーケティング&コミュニケーション本部長を経て、20年8月から現職。
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