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最古級の翁系面など初公開 太田古朴が著書で報告しながら所在不明…その後発見

産経ニュース / 2024年6月17日 11時55分

地蔵菩薩立像の納入品を示す図面(個人蔵)

高野山麓の細川八坂神社(和歌山県高野町)に伝わった翁(おきな)舞などの面8点が、奈良市の奈良大学博物館で開催中の企画展で初公開されている。奈良県吉野町出身の仏像研究家、太田古朴(こぼく)(1914~2000年)が約50年前に著書で報告しながら所在不明だった面で、令和4年に実物が確認された。うち室町時代前期にさかのぼる作とみられる翁系面4点は一組がそろうものとしては最古級で、芸能史上貴重な品という。

4点は翁と三番(さんば)叟(そう)、父尉(ちちのじょう)、延命冠者(えんめいかじゃ)で、古式翁舞の式(しき)三番(さんば)で用いられたそろいの面。このうち父尉と延命冠者の面は、次第に使われなくなり、残存例が少ない。

大河内智之・奈良大准教授(彫刻史)が細川八坂神社に所在不明の面があることを宮司から聞き、古朴の著作に、神社に隣接する阿弥陀堂の仏像修理に際し行った調査成果として存在が記されていることを確認。令和4年に和歌山県教育委員会の調査により神社の土蔵内から見つかった。大河内准教授は「高野山麓で室町時代前期に古式の翁舞が行われていたことを示す貴重な事例」と話している。

7月27日まで開催の企画展「太田古朴が見た山里の文化財」で公開。開館は午前9時~午後4時半で、土曜は正午まで。日曜、祝日は休館。無料。問い合わせは奈良大学博物館(0742・44・1251)。

在野にありながら埋もれた文化財を見いだし、その価値を多くの人々と共有してきた太田古朴。企画展では、そうした古朴の取り組みをつぶさに見ることができる。

古朴は「奈良美術院」で仏像修理を学んだ後、独力で各地の仏像や石造物を調査。大学や行政機関に所属せずに活動し、地域の文化財の修理や研究に取り組むとともに、その価値を発信し続けた。現在は奈良大が古朴の図面などを整理しており、今回の企画展開催につながった。

仏像修理の際などに古朴が作成した資料は、今日高く評価されている。特に図面はX線CTスキャン調査を思わせるような書き込みで注目され、奈良市の伝香寺・地蔵菩薩立像(はだか地蔵、重文)の図面は舎利や十一面観音像といった納入品の状況がよく分かる。

企画展では、高野山麓の細川地区で昭和50年ごろに行った仏像修理についても記した著書「美仏参籠(さんろう)」なども展示。各地で文化財の修理に情熱を傾け、地域の人や愛好家に価値を伝えたことを紹介している。

奈良大の大河内智之准教授は「高齢化、過疎化によって地域で文化財を守ることが難しくなりつつある。そんな中、太田古朴のような活動により多くの人が価値を知ることが文化財を守る原動力となる」と話している。(岩口利一)

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