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「ごみの島」の傷痕に学ぶ、環境学習広がる 史上最悪の産廃不法投棄事件あった香川・豊島で

産経ニュース / 2024年6月28日 11時22分

中学生らが見学した豊島の産廃不法投棄跡地=香川県土庄町

国立公園でもある自然豊かな有人島、豊島(てしま)(香川県土庄町)で発生した日本最大規模の産業廃棄物不法投棄事件は今月、公害調停が成立して24年となった。事件をきっかけに設立され、島内へのオリーブ植樹や環境保全活動に取り組む認定NPO法人「瀬戸内オリーブ基金」は、次代を担う子供たちへ教訓を伝え自然再生に取り組む「ゆたかなふるさと100年プロジェクト」を進めている。現場は今、貴重な教育の場となっている。

公害調停成立から24年となった今月6日、28・5ヘクタールの不法投棄跡地に光泉カトリック中学校(滋賀県草津市)の1年生66人の姿があった。瀬戸内オリーブ基金が企画した環境学習。同基金は調停成立の4カ月後、住民側弁護団長の故中坊公平弁護士と建築家の安藤忠雄氏が提唱して設立された。

不法投棄跡地は斜面が削り取られ、岩盤はむき出し。廃棄物から染み出す汚染水が海に流出しないよう、一時は海岸に遮水壁の鋼矢板が打ち込まれていたが、地下水が排出基準をクリアしたためすでに撤去され、整地されている。生徒たちは現場近くの資料館で、特殊加工した実際の産廃の断面や事件年表なども見学した。

参加した長谷川蒼岳(そうた)さんは「こんなに大きな規模で不法投棄をしていたとは。自分が住民だったらあきらめてしまうかもしれない」。笹本漣(れん)さんは「元の豊島を取り戻したいという住民一人一人の強い思いが伝わってきた。身近なことから自然を守る行動を取りたい」と感想を述べた。

事件の発端となったのは、昭和50年の土砂採取業者の産廃処分場建設許可申請だ。住民は反対運動を行ったが、3年後、県はミミズ養殖を名目に建設を許可。しかし業者は55年頃から自動車破砕くず(シュレッダーダスト)や製紙汚泥などの産廃を大量に運び込み、野焼きを続けた。

平成2年、廃棄物処理法違反で兵庫県警が業者を摘発したが膨大な廃棄物は放置され、「ごみの島」とも呼ばれるように。香川県は一部の廃棄物を処理した程度で「安全宣言」を出したため、5年11月、住民側が業者と県などに対し廃棄物の完全撤去を求める公害調停を申請。6年半後に住民側と県との調停が成立した。

令和2年までに廃棄物や汚染土壌など約91万3000トンを島外に搬出。廃棄物は隣の直島に中間処理施設を設けて融解、無害化して工事資材などに再利用された。事件をきっかけに廃棄物処理に関する法律が改正されたほか、社会全体がごみのリサイクルを進め、循環型社会を目指す契機にもなったとされる。

子供たちを対象にした環境学習は続く。今年7月には米国大学生の研修プログラムを受け入れる予定だ。

今月6日、子供たちへの説明を担った住民団体「廃棄物対策豊島住民会議」の安岐正三事務局長は「実際に現場に来て、当事者から話を聞いて五感で感じ、自分の考えを持つことが重要。われわれがやってきたことや思いが少しでも理解してもらえれば」。基金事務局の清水萌さんは「生まれるはるか前に起きた事件や公害調停を自分ごととしてとらえ、教訓を受け継いでいってほしい」と語った。(和田基宏)

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