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ニュースの価値判断はテレビより新聞 活字で一言一句全文読んでこそ 渡辺恒雄さん(5) アーカイブ「活字文化考」

産経ニュース / 2024年12月29日 11時0分

読売新聞の渡辺恒雄社長=平成7年9月21日

――最近、若者がテレビなど電波にひかれて、活字離れで新聞を読まなくなっています。テレビ・ラジオと新聞の違いはどういうふうに見ますか。

渡辺 大宅壮一さん(故人)がテレビの普及を「一億総白痴化」といったことがあるけどね。僕はテレビが一億人(日本国民)の頭を悪くするとは思わない。テレビにもいい番組があるんですから。しかし、視聴率を争うために非常に娯楽偏重になって、低俗番組が増えていることも事実ですね。

本当に教養を高めるため、あるいは速報性という面ではテレビはいいですよ。速報とか、現場がそのまますぐに見られるというような点では、確かにテレビは優れた能力を持っている。だが、一日中放映されているテレビが日本人の文化的、知的水準を上げるのにどれだけ役立っているかというと、必ずしもそうではない。僕は深夜番組は見たことないけれども、多少わいせつなものもあるようだし…。

――とにかく、テレビ各局間の視聴率争いは激しいですからね。

渡辺 アメリカでもABC、NBC、CBSの三大ネットが、最近ことごとく大企業に買収されちゃったけれど、初期の段階では相当低俗番組をやっていたんですよ。アメリカはFCC(連邦通信委員会)というのが強大な権限を持っていて、放送の許認可権を発動しますからね。それで三大ネットに対して(低俗番組を続けていたら)再免許しないという脅しをかけたんです。それから三大ネットの質が非常に上がってきた。

――残念ながら日本のテレビ界の現状はそこまでいっていない。視聴率ほしさに低俗になりつつある。阪神大震災のあと、日本新聞協会が調査したところ、「信頼できる情報は新聞だ」という結果が出てます。

渡辺 テレビは速報をあせるために、死者は二人だとか、三人だとか、初期の段階でたいした地震じゃないというような印象をばらまいたことも事実。したがって、総理大臣が被害の大きさに気がつくのに三時間かかったり、知事が自衛隊の出動を要請するのに四時間かかったりした。やっぱり新聞を見ないと正確な情報を得られないという面はあるんですね。

――村山内閣の初動体制の遅さは、テレビ報道の信頼性のなさに起因すると。

渡辺 信頼性がないわけじゃないんだけど、あまり速報性ばかりを尊重し、第一報だけを信用すると、間違ったことが起きる。新聞だってたまにはそういうことがある。最近、有名な週刊誌がまだ優勝していない日に、過去形でオリックスを優勝させちゃったり、ね。あんまり速報を急ぐと誤報につながるんだ。誤報というのはわれわれ報道人にとっては一番悪いことだからね。

――活字と映像の基本的な違いは何でしょうか。

渡辺 簡単にいえば、政府が発表する経済政策の全文を放映したテレビ局がありますかね。ひとつもないですよ。見出しだけですよ。あの見出しだけ読んで、政府の経済政策の内容は分からんですよ。それも瞬間的に消えるんだから。政府発表の経済政策で景気が回復するのかしないのかは、テレビの報道だけでは絶対分からないですよ。やっぱり新聞の活字で一言一句全文を読んでこそ、それぞれの産業にどういう影響を与えていくのかが計算できるんでね。 (文化部長 小林静雄)

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