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山上直子の犬も歩けば 町内最弱の猫「ぽー」の物語 元戦場カメラマンの「やさしいねこ」展

産経ニュース / 2024年10月10日 13時0分

穏やかな表情がみられるようになったぽー(太田さん提供)

元戦場カメラマンで滋賀県在住の写真家、太田康介さん(66)が大津市のびわ湖大津館3階市民ギャラリーで写真展「やさしいねこ」を開いている。東日本大震災で取り残された動物たちや、多摩川の河川敷で暮らす猫と人との交流など、「人と動物」に焦点をあて写真を撮り続けてきたが、今回は保護猫活動がテーマ。書籍化もされ、TNR(不妊手術をして元の場所に戻すこと)を始めるきっかけになった元野良猫「ぽー」との日々を写真で紹介、「活動に理解を」とPRしている。

気弱な〝有名猫〟

会場に入って驚くのが、展覧会の主人公で、外猫から太田家の家族になった「ぽー」の巨大パネル。白いからだにしま柄の尻尾が特徴で、目を細めて情けなさそうな顔をしている。

実はちょっとした有名猫で、『夜廻り猫』で知られる漫画家、深谷かほるさんが注目し、太田さんとぽーを取り上げて話題になった。

また、平成29年に太田さんがフォトエッセー『やさしいねこ うちのぽー』(扶桑社)を発刊した際には糸井重里さんが帯のコピーを手掛けた。「ぽーという猫がいた。それだけで、うれしくなる」と。

そんな縁もあって、東京では何度か『やさしいねこ』の写真展を開催。京都の大垣書店イオンモールKYOTO店でパネル展を開いたことがあるが、関西での本格的な写真展は今回が初めてだ。

「尻尾が特徴的だったので、名前はしっぽのぽーに」と笑う太田さん。

「どんくさくてブサイクなんですが、とてもやさしい性格で町内最弱の猫でした。いつもいじめられて、他の猫がごはんを食べ終わるまでただじっと待っているんです。いつのまにか気になって見守るようになりました」

保護活動に目覚め

太田さんは紛争下のアフガニスタンや旧ユーゴスラビアなどで取材した元戦場カメラマン。

東日本大震災では被災地に入り、家畜やペットなどの動物たちを撮影した写真集『のこされた動物たち 福島第一原発20キロ圏内の記録』(飛鳥新社)などで注目を集めた。

自宅では猫を飼っていたが、近所の野良猫たちにあまり関心はなかった。あるとき、彼らが暮らす環境の過酷さに気づく。

「彼らの生活が少しでも良くなるように何かしたい。そう考えて自分でできる小さな活動を始めました」

TNRは野良猫が増えないようにする保護活動の一つ。捕まえて避妊手術を受けさせ、その目印として耳先をカットした上で元いた場所に戻す。その代限りの命を見守る活動である。

「ぽーは私が初めてTNRをした猫なんです。特別な思いがあります」という太田さん。

実は手術後に元いた場所に放して見守ったが、また他の猫にいじめられているのを見かね、結局、自宅で引き取ったのだった。

家猫になっても弱かった

ところが…。これで万事解決と思ったが、またまた難題が。

「ぽーは家でも最弱の猫でした。先住猫たちに怒られながら少しずつ生活に慣れていきました。表情も穏やかになり、新しくやってきた子猫たちの面倒をみてくれるやさしい猫でした」

ぽーはその後、3年ほどで病気で死んだ。出会いから試行錯誤で捕獲器を作り、捕まえ、外猫として見守り、家猫として引き取り、病気と闘い、みとる最期まで。太田さんは、撮りためた写真に軽妙なエッセーを添えて著書を発刊。写真展を開いてきた。

「TNRは飼い主のいない猫の殺処分を減らし、交通事故で死ぬ猫を減らし、ご近所の苦情を減らすことにもつながります。それを教えてくれたのがぽーでした。少しでもその活動について知ってもらい、関心のなかった人にも理解していただけたらと思います」

写真展は13日まで。午前11時~午後5時。無料。詳細は太田さんのブログから。

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