海外から熱中視「宇治抹茶」売れ過ぎ 訪日客も爆買い、販売制限の動きも
産経ニュース / 2025年1月9日 17時38分
海外での抹茶ブームや訪日外国人客(インバウンド)の急増を背景に、京都府宇治市周辺で約800年にわたり生産されてきた「宇治抹茶」が、昨秋から品薄状態になっている。個人で消費しきれない量の抹茶を「爆買い」する訪日客も確認され、販売を一時休止したり、購入数を制限したりする店も。海外では人気の高まりから高値で転売される動きまであり、国は輸出拡大も視野に抹茶の生産増を目指す。
《新規事業のために月100キロの抹茶がほしい》
京都府内最大の茶の生産地・和束(わづか)町にある茶農家「細井農園」の交流サイト(SNS)には、昨秋ごろからこんなダイレクトメッセージ(DM)が届くようになった。
農園の細井堅太代表によると、発信者の大半は海外だが、そもそも農家に直接連絡が来ること自体が珍しい。その後も海外から連絡が相次ぎ、数十~数百キロ単位で抹茶の購入を求めるメッセージが後を絶たないという。
「当初はほかの農家を紹介したりしていたが、今は対応しきれない」と細井代表。需要の急増によって粗悪品や偽物が出回れば「宇治茶ブランドに悪影響を与えるのでは」との懸念も抱くようになった。
輸出量2・5倍に
鎌倉時代に生産が始まったとされ、香り高く、甘さと渋さのバランスが絶妙な宇治抹茶。米国などでは日本食ブームや健康志向の高まりから、抹茶を使ったラテやスイーツまで人気となっており、財務省貿易統計によると、令和5年の抹茶を含む緑茶の輸出量は7579トン、輸出額は292億円と過去最高を更新した。輸出量はこの10年で約2・5倍となり、輸出額の7割超を抹茶など「粉末状の茶」が占める。
京都府内の製茶業者らでつくる京都府茶協同組合によると、宇治抹茶の品薄傾向が顕著になったのは昨年10月末ごろからだ。特に高品質で希少な抹茶の需要が急増し、供給が追い付いていないという。
少しずつ購入を
茶道関係者らの固定客への販売を確保する必要もあり、一部の小売店では昨秋から販売を見合わせている。また、京都市内の百貨店に入る店舗などでは、購入個数の制限を続けている。
宇治茶の老舗「通圓(つうえん)」(宇治市)でも、昨年11月ごろから訪日客を中心に大量の抹茶を購入するケースが増加。1人の客が10個ほど買うこともあり、希少な一部商品は品薄になっているという。通円祐介社長は「百貨店などで抹茶の購入制限がされたことが影響したのではないか」とみている。
京都府茶協同組合の担当者は「上級品はもともと数が少なく、手間もかかっている。生産できる量には限りがある」とし、当面は購入数の制限といった措置もやむを得ないと指摘。「抹茶は長期保管すると品質が落ちる。少しずつ必要な分を購入してほしい」と呼びかけている。
アジア各地で高額転売の動きも
東南アジアなど海外のショッピングサイトでは、宇治抹茶を高額で転売したとみられるケースが多数確認されている。中国では、宇治茶関連の商標が無断で登録される問題も発覚している。
タイのサイトでは昨年末、40グラムで定価約1500円の商品が、3倍近い約4400円で販売されていた。宇治茶の老舗が販売していた商品で、扱う種類も多様だ。ベトナムやシンガポールなどのサイトでも、同様に定価の2倍以上の値がついていた。
転売とみられる行為と今回の需要増との因果関係は明らかでない。ただ、こうした行為を受け、国内企業の中には、転売目的で抹茶を購入しないよう強く呼びかけるところもある。同一住所への大量発送や転売が想定される過剰な注文には応じないといった対策を講じている。
海外のショッピングサイトでは、老舗の宇治抹茶の類似品・模造品の販売も確認されているという。中国では無断で「京都宇治」が商標登録され、京都府茶協同組合が2019年11月、中国当局に無効取り消しを請求。21年1月に請求が認められていた。
■宇治茶 京都府宇治市を中心にした周辺地域で栽培され、京都府内の業者が地元で仕上げて加工した茶。鎌倉時代、禅僧・栄西が中国から持ち帰った茶種が宇治に植えられたのが始まりとされる。最初は茶葉を乾燥させた「てん茶」を粉末状にした抹茶が飲まれていたが、江戸時代に新芽を蒸して熱乾燥させる宇治製法が生み出され、「煎茶」として庶民に広まった。(堀口明里)
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