清浄でミネラル豊富な海洋深層水 利用拡大で食の未来広がる サツキマスやカキの養殖も
産経ニュース / 2025年2月2日 7時30分
太陽の光が届かない海の深い場所にある「海洋深層水」の活用が、各地で進められている。全国に先駆け、高知県で取水が始まってから今年で36年。ブームを呼んだ飲料水だけでなく、加工食品、養殖漁業など、その幅は広がっている。
光届かぬ深海の、10度以下の海水
海洋深層水は水深200メートルより深いところにある海水を指す。太陽光が届かず、年間を通じて水温が10度以下の低温に保たれ、植物プランクトンが光合成をしないため、栄養源となるミネラルが消費されることなく、多く残っている。陸から離れた深海の水は汚染物質が少なく、清浄である点も大きな特長だ。
平成元年、国内初の海洋深層水の取水施設が高知県室戸市に造られ、現在は全国で19カ所に増えている。
同県海洋深層水推進室の担当者は、「室戸沖は世界ジオパークに認定されている独特の地形に沿って『湧昇(ゆうしょう)流』という、下から突き上げるような海流があります。発生海域は全世界の海のわずか0.1%。希少な流れを捉えて取水しています」と説明する。
県内では脱塩処理した飲料水を皮切りに、累計で1800点以上の深層水を使った商品が開発される一方、水産業や農業への活用も進む。
安定した水で育った「幻の魚」
食塩やにがり、海洋深層水など、無機ミネラルの総合メーカー、赤穂化成(兵庫県赤穂市)は、室戸市でサケ科の魚、サツキマスの陸上養殖を行っている。
天然のサツキマスは遡上(そじょう)する河川の環境変化などによって個体数が減り、「幻の魚」と呼ばれる。低温で、細菌やウイルスをほとんど含まない深層水を引き込んだ水槽で育て、1年を通じて安定供給できるようになった。「プラチナサツキマス」の名で販売され、その味に魅了される料理人が増えている。
蕎麦割烹「こうもと」(東京都港区)の関澤賢治料理長もそのひとりだ。
「最初に食べたとき、今までの養殖サーモンとは違うと感じました。くさみがなく、脂が乗って身のキメが細かい。低温で安定した水で育ったからストレスがかからず、身がしまっている」と魅力を語る。
直送されたプラチナサツキマスを使って、腕をふるった。1品目は、しめサバのように酢でしめ、カラフルな野菜と合わせてサラダ仕立てに。軽やかな酸味をまとい、しっとりとしたサツキマスと、歯切れの良い根菜との異なる食感のハーモニーが楽しめる。
次はパン粉をつけ、からりと揚げた一皿。外側はサクッと香ばしく、中は生のまま。自然薯(じねんじょ)を使ったタルタルソースがサツキマスの上品な甘みを引き立てる。
陸上養殖に使い「あたらないカキ」誕生
昨年10月、第1回の「海洋深層水サミット」が室戸市で開かれた。全国の自治体や企業などによって、さまざまな活用の取り組みが発表される中、注目されたのが「久米島モデル」だ。
沖縄県の久米島では、平成25年から「海洋温度差発電」の実用化を進めている。低温の深層水と、太陽光で温められた表層水との20度以上ある温度差を活用し、エネルギーを生み出す。
発電後の深層水は名産のクルマエビをはじめ、水産物の養殖に利用。世界で初めてカキの完全陸上養殖に成功し、〝あたらないカキ〟が誕生した。発電後に水温が5度ほど上がった深層水が、カキの生育には適しているという。
養殖を手掛けるジーオー・ファーム(同県久米島町)の鷲足恭子副社長は、「清浄な深層水で育てることで、食中毒のリスクが低いカキができます。ここ数年で海の環境は一変し、カキが育ちにくくなっている。深層水を活用する技術を進化させて、次の世代に引き継いでいきたい」と力を込めた。(榊聡美)
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