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新聞記者は基礎的な勉強してこそ批判する能力がつく 渡辺恒雄さん(16完) アーカイブ「活字文化考」

産経ニュース / 2024年12月31日 14時0分

読売新聞の渡辺恒雄社長(当時)=平成7年9月21日

――新聞記者の大先輩として、記者クラブ制度や後輩記者への注文などを。

渡辺 記者クラブ制度はうまくいっていると思う。だって高度の国家機密をかぎ出したり、場合によって書いていいことと悪いことの区別をしたり、いろいろしなきゃいけない。それをきちんと判断しない他のメディアを記者クラブに入れて、表に出してはいけないことも全部出ちゃったら、われわれが真相に迫るチャンスがなくなる。

記者クラブが官庁にコントロールされているというのは大うそであって、僕自身の経験からすれば、官庁をコントロールしていたつもりだ。官庁をコントロールできない記者じゃしようがない。僕はお役人と論争やけんかを何度もしたことがある。絶えず批判してりゃいいんですよ。知って批判すればいいんだから。それを中にも入らず、外から批判したって、痛くもかゆくもないよ、お役人は。そんなことが分からないで、「記者クラブはやめろ。無制限に開放しろ」なんていうのは、取材をしたことがない人がいうんですよ。

――記者へは。

渡辺 新聞記者に言いたいことは、基礎的な勉強をすることだね。経済、税制、財政、マルチメディア…。いろんな技術的知識もそうだし、自分の会社の社論が分かるような基礎的な思想的勉強も必要だ。一人ひとりがちゃんと自分の哲学を持つべきだし、それで自分の哲学に合わないというなら、その新聞社に最初から行かなきゃいいんだよ。共産党の支持者は読売新聞を受験しませんよ。そういう人たちは、悪いけど左翼的傾向の強い新聞にでも行ってもらうしかないんだ。新聞記者は、もっと政策や世界観について基礎的な勉強をして、政府関係機関、あるいは政治家の発言に対して、ただちにそれを理解し、批判する能力を持つ、そのレベルを上げることですよね。

アメリカでは、ウォルター・リップマンとか、ジェームス・レストンという大記者がいて、そういうクラスの記者になると、大統領と対等だからね。ケネディが大統領に当選したのも、「ワシントン・ポスト」の自殺したグラハム社長のおかげだと思う。この人が「南部テキサスのジョンソンを副大統領候補にしなさい。そうしないとあなたは南部の票を取れない」と忠告した。弟のロバート・ケネディは、反対したが、ケネディはグラハム社長の意見を取り入れて大統領に当選した。だから、大統領になった後もいろいろ相談してましたよ。

大統領からも意見を聞かれるくらいの見識を持った記者がどんどん育つ。公正取引委員会の流通経済しか分からん程度の学者よりもレベルの高い記者をたくさんつくることだよ。

――最後ですが、新聞の適正発行部数、あるいは限度については、どう考えていますか。

渡辺 まあ、一千二十万部ぐらいが限度じゃないでしょうか(爆笑)。一千万とは言いたくないからね。上限は一千二十万部で、下限が一千五万部ぐらいね。この八月に一千五万部割っちゃったけどね。一千一万なんぼでね、低空飛行ですよ。一千万部を守るというのは容易じゃないですよ。これ、かなわんわ。死ぬ思いしているよ、そりゃ。

――長時間ありがとうございました。 (文化部長 小林静雄)

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